2011 Fiscal Year Research-status Report
酸拡散を制御した酸増殖プロセスによるEUV用レジストの高感度化
Project/Area Number |
23760698
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
榎本 一之 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (50465978)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 微細加工 / レジスト / 極端紫外光(EUV) / 酸増殖反応 / パルスラジオリシス |
Research Abstract |
一つの酸をトリガーとして自己触媒的に新たな酸を非線形生成することができる酸増殖剤に注目し、極端紫外光 (EUV) 用レジストと酸増殖プロセスの組み合わせによる高感度化を目指している。EUV を用いた放射線微細加工では、レジストポリマー (たとえば、ポリヒドロキシスチレン誘導体: PHS) のイオン化で発生した二次電子が酸発生剤TPS-Tfと反応することで酸が生成し、化学増幅によりパターンを形成する。そのため、酸増殖剤の添加によりTPS-Tfと二次電子との反応が阻害されると酸発生効率は低下する。そこで、合成したピナンジオール型酸増殖剤と二次電子との反応性をパルスラジオリシス法により検討した。 酸増殖剤は、ピナンジオールモノトシラート (PiTs)、および ピナンジオールモノトリフルオロメチルベンゼンスルホナート (Pi3F) を用いた。各濃度の酸増殖剤PiTs、Pi3Fを添加したテトラヒドロフラン (THF) 溶液の電子線パルス照射により1300 nm に観測されたTHF溶媒和電子の減衰挙動を調べた。溶媒和電子と酸増殖剤の反応は、指数関数的に減衰し、酸増殖剤濃度の増加とともに減衰速度が増加した。反応速度定数は、それぞれ4.1 × 1010、9.2 × 1010 M-1 s-1であった。酸発生剤TPS-Tfの反応速度定数は、1.6 × 1011 M-1 s-1 であることから、酸増殖剤(特にPi3F)を添加することによりTPS-Tfと二次電子との反応が阻害されることが示唆された。一方、酸増殖剤と二次電子の反応で形成したラジカルアニオンの減衰挙動を調べた結果、長寿命のPi3FラジカルアニオンからTPS-Tfへの電子移動を経由した新たな酸形成反応を見出した。酸増殖剤が引き起こすTPS-Tfからの酸発生効率の阻害効果とその解決法を示すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代微細加工に要求されている 22 nm 以下の解像度を有する制御技術を実現するためには、ナノ空間領域の酸発生効率を上げることが重要である。そこで、本研究では一つの酸により自己触媒的に二つ、三つと酸をねずみ算式に増加することができる酸増殖プロセスを導入することでレジストの高感度化を目指している。平成23年度は、酸拡散の制御を目的とした酸増殖剤の分子設計に重点を置いた。具体的には、立体的にバルキーな構造を有する10種類のピナンジオール型酸増殖剤を合成した。得られた酸増殖剤は、EUVフラット露光によるレジスト感度を調べることで酸増殖剤の分子構造と酸発生効率との相関を明らかにした。また、パルスラジオリシス法による酸増殖剤と二次電子との速度論解析を行うことで、スルホンエステル骨格を有するピナンジオール型酸増殖剤の放射線化学反応初期過程を明らかにし、これからの結果を学術論文としてまとめた。研究目的に対する到達度の自己点検評価は、85%である。残り15%は、当初予定していた酸増殖剤を高分子側鎖に化学修飾した酸増殖ポリマーの合成に苦戦していることが減点要因である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、初年度に合成した酸増殖剤について、75 keV 電子線描画装置を用いて 22 nm 以下の解像度を有するパターン形成を行う。また、酸増殖ポリマーの合成にも重点を置く。解像度、感度、LER 等を解析することで、EUV 用レジストとしての実用的特性を評価する。LER 低減を目的に、塩基性添加物による酸拡散の抑制に関する検討を遂行する。得られた成果蓄積を合成にフィードバックさせることで、さらなる性能向上を図り、本研究を総括する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、初年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。次年度は、上記推進方策に基づき酸増殖剤の合成とそのレジスト評価に重点を置く。そのため、有機試薬、反応用ガラス器具類、およびシリコンウエハーの購入が必要である。また、世界中の研究者が集う国際学会に参加し、国内外における EUV レジスト研究の動向調査を行うとともに本研究成果をアピールする。
|