2012 Fiscal Year Research-status Report
人工さび粒子を用いた鋼材の耐食性発現機構の解明および高耐食性鋼材の開発
Project/Area Number |
23760699
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
田中 秀和 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (70325041)
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Keywords | 人工さび / 鋼材 / 腐食・防食 / 大気腐食 / 保護性さび粒子層 / 形態制御 / 分子吸着 |
Research Abstract |
本課題では,鋼材の腐食生成物である鉄さび,亜鉛さびの生成,構造,形態とさび層の緻密性,安定性,保護性の関係をナノ~マクロレベルで解明することを目的する。平成24年度の実績を以下に示す。 (1)SOx環境下での腐食モデルとして,人工鉄さびα-,β-FeOOHの生成に対する亜硫酸イオンの影響を調べた。亜硫酸イオンはFeOOHの生成を抑制し,その効果はβ-FeOOHで顕著であった。よって,SOxから生成する硫酸イオンや亜硫酸イオンは,さび粒子の生成に影響すると分かった。(2)塗装防食鋼板の腐食モデルとして,人工鉄さびFeOOHの生成に対するリン酸イオンの影響を検討した。α-FeOOHではα-FeOOH加えリン酸鉄粒子が生成したが,β-FeOOHではさび粒子の生成が抑制された。よって,飛来塩分環境下での塗装防食はさび生成を抑制し,腐食の進行を促進すると示唆される。(3)Zn-Al合金被膜の腐食過程を調べるため,人工亜鉛さびZinc Hydroxysulfate (ZHS)の生成に対するAl(III)の影響を検討した。実鋼板組成のAl5%,55%ではそれぞれZHS,LDHが生成したが,粒子は板状で大きさに変化は見られなかった。よって,Zn-Al合金被膜から生成するさびは鋼材表面に緻密な保護性板状粒子層を形成すると考えられる。(4)鋼材表面でのFe3O4さびの生成機構の解明のため,鉄粉-β-, γ-FeOOH圧密体を水溶液中で処理した。Fe3O4の生成と同時にFeOOH粒子は消失した。このことは,Fe3O4の生成反応は鋼材表面のFeOOHさび粒子層全体で進行すると示唆している。(5)Cu(II)添加α-FeOOHさび粒子の生成機構,微細構造をSpring-8でのin situ XAFS実験で調べた。Cu(II)は非晶質酸化鉄粒子のFe(III)配位状態をナノレベルで変化させると分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は人工鉄あるいは亜鉛さび粒子の生成に対するアニオンの影響およびナノ-ミクロ構造解析,人工さび粒子のマクロ物性評価を達成目標に設定した。人工さび粒子の生成に対するアニオンの影響は,鉄さび,亜鉛さびともに硫酸イオンが支配的と解明された。さらに,鉄さび粒子の生成にはリン酸イオン,亜硫酸イオンも強く影響すると明らかになった。また,マクロ物性については分子吸着測定,表面電位測定,接触角測定などを行っており,さび粒子層の保護性,安定性の評価およびミクロ構造との関連性の解明は進んでいる。また,気体透過性実験についてもさび粒子サイズ,形態との相関が認められた。さらに,Cu(II)添加α-FeOOHのナノレベルの生成過程および超微細構造はCu,Feの状態を中心にSPring-8のin situ XAFS測定により解明出来つつある。そのため,研究目的の達成度について,「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)鋼材の耐食性向上に有効な合金金属とされているCu,Cr,Ni,Tiの役割を解明するため,種々の金属イオン存在下で人工鉄さびおよび亜鉛さび粒子の合成を行い,粒子の生成過程,構造,形態をナノ-ミクロレベルで解析するとともに,マクロ物性(分子吸着能,表面電位,接触角,気体透過性)について評価し,鋼材の防食にどのように有効かを見いだす。 (2)鋼材の耐食性向上のため,有機酸,リン酸などで表面処理した鋼材が使用されている。これらの処理は防食には有効であるが,腐食時,とくにさび粒子生成時にどのような影響を及ぼすかは十分解明されていない。そこで,有機酸イオンやリン酸イオン存在下で人工鉄および亜鉛さび粒子を合成し,粒子の生成過程,構造,形態をナノ-ミクロレベルで解析する。 (3)人工鉄および亜鉛さび粒子と実環境で生成するさび粒子(実さび粒子)の構造,組成,形態を詳細に比較・検討したところ,両者に多くの共通点が認められたが,気候や暴露環境による大気組成や温湿度の変化は人工さび実験では完全に再現できていない。種々の暴露環境,大気組成での実さび粒子の形態,構造に関する情報は,これまで多く報告されており,さらに研究協力者は鉄鋼メーカーの技術・研究者であるため多くの基礎データを有している。そこで,人工さび粒子と実さび粒子の構造や形態の違いの要因をナノ-ミクロレベルで解明し,暴露環境および大気組成とさび粒子の生成に関係を系統化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(16 results)