2011 Fiscal Year Research-status Report
金属ナノ粒子によるセラミックス表面修飾技術の開発と金属基複合材料への応用
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23760708
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
水本 将之 岩手大学, 工学部, 准教授 (90325671)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 金属ナノ粒子 / 無電解めっき / 複合材料 / 表面処理 |
Research Abstract |
金属ナノ粒子は,その表面積の大きさから,バルクや薄膜よりも高活性であることが知られている.そこで,被めっき体の性状を問わない無電解めっきを応用してセラミックス表面を金属ナノ粒子で修飾することにより,拡散接合や複合材料作製の際の高活性なインサート材として機能することが期待され,より低エネルギーでの複合化が可能になると考えられる.そこで,無電解めっきを応用して,セラミックス基板上へのCuまたはNiナノ粒子の作製およびその粒径等の制御技術の確立を試みた. 金属粒子の粒径を制御条件を調べるため,めっき浴の温度およびpHを変化させてガラス基板上に金属粒子を作製する実験を行った結果,288~298KでpHを11.5にすることにより,粒径の制御に適した成長速度が得られることがわかった.また,金属粒子の粒子数を制御するために,前処理工程で用いる溶液中のPd濃度の影響を調べた.その結果,溶液中のPd濃度の増加に比例して析出する金属粒子の数も増加し,その粒径も均一になることがわかった.これは,Pd濃度の増加に伴い金属粒子の析出の際の触媒核が増加し,金属粒子の成長場が均一になったためと考えられる.以上の結果を考慮して,ガラス基板上への金属ナノ粒子の作製および粒径の制御を試みたところ,50~300nmの範囲で粒径を制御した金属ナノ粒子の作製条件を明らかにすることができた. さらに,アルミナ基板上へのCu粒子の作製を試みた結果,ガラス基板とほぼ同様の条件で金属粒子の作製が可能であることがわかった.また,粒径についても,同様にめっき条件を制御することによって制御ができることがわかった. これらの無電解めっきによる金属ナノ粒子の作製と制御に関する知見は,従来の報告例がないものであり,次年度および今後の金属ナノ粒子の応用に関する研究において非常に重要な知見である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画では,無電解めっきを応用してガラス基板上にNiまたはCuを粒子状に作製し,めっき液の組成やpH,浴温度等のめっき条件が,ガラス基板上に析出する金属粒子の分布および粒径に及ぼす影響を調べることを第一目標としていた.この目標に関しては,金属粒子の分布に及ぼす因子として,前処理工程で用いる溶液中のPd濃度の制御が重要であることを明らかにし,さらに,金属粒子の粒径の制御に適当なめっき条件を明らかにすることができた.これらの結果を用いることにより,CuまたはNiを50~300nmの範囲において粒径を制御したナノ粒子状にガラス基板上に作製することに成功したことから,目標を十分に達成することができたと考える. さらに第二目標として,次年度の研究計画への展開に必要な知見として,第一目標で得られた成果を応用し,セラミックス基板上への金属ナノ粒子の作製への展開を挙げていた.この目標に関しても,アルミナを基板として用いた実験を行い,金属ナノ粒子の作製および粒径の制御条件に及ぼす基板の影響について調べた結果,ガラス基板とほぼ同様の条件で,金属ナノ粒子の析出および制御が可能であることを明らかにすることができた.また金属ナノ粒子を析出させたガラスおよびアルミナ基板を金属溶湯に浸漬させた実験を行った結果,ぬれ性の改善が観察されたことから,十分な成果が得られたと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
セラミックス基板上への金属ナノ粒子の作製条件については十分な知見を得ることができたが,加圧含浸法によりMMC を作製する際にはプリフォームを予熱する必要がある.その際に,金属ナノ粒子も熱処理されると考えられるが,金属ナノ粒子は高活性なため,従来のバルクや薄膜状の金属への熱処理の影響とは異なる挙動を示す可能性が高い.そこで,金属ナノ粒子の性状に及ぼす熱処理の影響を調べるために,作製した金属ナノ粒子について,様々な条件で熱処理を施し,X線やTEM等を用いて金属ナノ粒子の性状の変化を知らべる.得られた結果から,金属ナノ粒子の特性を発揮するための最適な熱処理条件を明らかにする. 次に,分布および粒径の異なる金属粒子で修飾しセラミックスを強化材に用いてAl合金と複合化し,セラミックス/溶融マトリックス合金間のぬれ性および含浸圧力に及ぼす金属ナノ粒子の分布及び粒径の影響を明らかにする.また,複合化後のMMC中のセラミックス/マトリックス合金界面をFE-SEM等により調べ,複合化過程に及ぼす金属ナノ粒子の影響および金属ナノ粒子をインサート材に用いた場合の最適な複合化条件を明らかにする.さらに,これまでの実験で用いてきたアルミナに加えて,異なる種類のセラミックスについても表面への金属ナノ粒子の作製条件およびセラミックス/溶融マトリックス合金間のぬれ性に及ぼす影響について調べる必要があるため,それらについて実験に適した形状に加工したセラミックスを用いて実験を行う. 以上の実験により得られた知見を,研究代表者らのこれまでのMMC に関する研究成果と統合することにより,従来の加圧含浸法における含浸圧力をさらに減少させた「超低圧加圧含浸法」のための基礎技術の確立を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度では,実験に臨むに際して十分に事前の検討を重ねて,実験条件の絞り込みを適切に行った結果,当初に予定したよりも効率的に研究を遂行し,当該年度に予定していた目標に達するに十分な成果を得ることができた.そのため,申請時に予定していたよりも消耗品の使用量を少なくすることができたために,次年度使用額が生じた.その一方で,溶融金属と金属ナノ粒子で表面を修飾したセラミックスとのぬれ性を詳細に調べるためには,市販の形状のセラミックスをそのまま用いるのでは適切な実験を行うことが困難であることもわかった.従って,次年度では実験に適した形状に設計・加工したセラミックスを用いて実験する必要があり,その分の素材費および加工費は次年度に予定している研究費を上回ることが予測される.その結果生じるであろう研究費の不足分を充当し,当初の研究計画を円滑に遂行するために,次年度使用額を用いる予定である. また,次年度の研究費の大部分については,研究計画の遂行に必要な消耗品への使用を予定しており,現時点では研究計画はおおむね順調に進行していることから,当初の計画通りに使用する予定である. さらに,当該年度に得られた研究成果については,次年度において複数の学会での発表および国内外の学術雑誌に学術論文として投稿する準備を進めている.これらに関しても,当初の計画通りに,次年度の研究費を使用して研究成果の公表を行う予定である.
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Research Products
(5 results)