2011 Fiscal Year Research-status Report
振動一方向凝固法によるシリコンインゴットの結晶粒径制御
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23760714
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
成田 一人 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50404017)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 太陽電池 / 多結晶 / シリコン / ファセット成長 / 双晶 / 一方向凝固 / 振動 / 超音波 |
Research Abstract |
多結晶シリコン(Si)太陽電池の性能改善の鍵を握るのは,一方向凝固法を用いたSi融液の凝固過程においてSiインゴットの組織を如何に制御するかである。つまり,粗大な結晶粒からなる多結晶Siインゴットを作製し,電子と正孔の移動を妨げる要因である格子欠陥と不純物を低減すれば,太陽電池の製造プロセスにおいて生じる光電気変換効率の低下を抑え,単結晶Si太陽電池と同等の性能を低コストで得ることができる。本研究では,Si融液の一方向凝固過程において,電動または超音波振動を印加した際に起こる組織変化について研究し,その成果を太陽電池用多結晶Siインゴットの結晶粒径粗大化法に応用することを目的としている。 特に本年度は,超音波振動の印加可能な一方向凝固炉の設計と電動振動によるSiインゴットの組織変化についての調査・研究を行った。作製した一方向凝固炉では,電動と超音波振動を印加できる他,試料と炉の両方を移動できる工夫を施しており,汎用性がある構造となっている。電動振動(120Hz)を印加しながら,40μm/secの速い冷却速度で,Si融液を一方向凝固した結果,<211>, <110>及び<100>方位を成長方位とする粗大なSi結晶粒が初期凝固部(るつぼ底部)にて観察された。初期凝固部から離れると,冷却速度が速すぎるために結晶粒が微細なものとなったが,この初期凝固部の粗大な結晶粒を種結晶とみなし,冷却速度を制御することにより,初期凝固部から最終凝固部へ向けて粗大な柱状晶を育成できる可能性が見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,多結晶太陽電池の結晶粒を粗大化し,電子・正孔の移動を妨げる要因である格子欠陥と不純物を取り除くことにより,単結晶Si太陽電池相当の光電変換効率を得ることを目指している。 本研究において,結晶粒径の制御を担うものは,冷却速度と振動である。冷却速度の影響に関しては,速度が上がることにより,<111>のファセット成長が抑制され,結果として<211>, <110>及び<100>方位を成長方位とする粗大なSi結晶粒が初期凝固部(るつぼ底部)に成長することが分かった。電動振動を印加した場合,その現象がさらに顕著に現れることが分かっている。現時点では,超音波の影響は明確にはなっていないが,電動振動と同様にSiインゴットの凝固組織に影響する可能性が高く,今後の研究成果にも期待が持てる状況にある。また,予備実験として,電動振動(120Hz)を印加しての40μm/secでの一方向凝固途中に,振動の印加を中止し,冷却速度を5μm/secに落としての凝固実験を行ったところ,初期凝固部から最終凝固部に向かって結晶を育成できることが確認された。今後,さらに実験を進め,太陽電池の光電変換効率の向上に繋がる最適な組織探索を行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,振動の周波数を変えた場合,一方向凝固したSiインゴット組織がどのように変化するかを調査する。超音波の印加可能な一方向凝固炉もほぼ完成に至っているので,超音波の影響について,冷却速度を変化させながら調査する予定である。振動を印加しながらの一方向凝固において,初期凝固部に粗大な結晶粒が得られることが明らかになってきているので,この粗大な結晶粒を如何に育成させるかが,次の研究段階では重要である。そのために,一定の冷却速度で一方向凝固するのではなく,冷却速度(試料又は炉の移動速度)を変速する必要があると考えており,振動のON, OFFのタイミングと合わせて,初期凝固部の粗大結晶を育成する最適条件の探索を行う。また,初期凝固部に粗大結晶ができる理由について明らかにする必要がある。初期凝固部について,SEM,EBSD,TEMなどの分析機器を用い,詳細な結晶の成長方位解析を行うと同時に,シミュレーションによる解析にも取り組む予定である。さらに,振動のエネルギーが過冷度に及ぼす影響について測定するために,初期凝固部(ルツボ底部)とそこから離れた位置での温度履歴を記録し,核生成と成長の過冷度変化について調べる。今回の実験の対象は,ファセット成長するSiであるが,ノンファセットする純Al, Al-Cu合金等についても比較実験として振動の影響を調査したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では,Si融液の凝固中に振動を付与することを一番の特徴としている。超音波の印加可能な一方向凝固炉を既に組み上げているが,超音波印加装置の接続を確実にするために追加部品の購入が必要である。また,より強力な機械振動を印加するために,新たにエアーを利用したバイブレーターの使用を考えており,購入を検討している。Siの融点は1683Kと高いので,凝固の過程を直接観察することは難しい。振動の影響を観察するため,透明有機化合物を用いた簡易実験を考えており,冷却水循環装置,ビーカー類などの実験器具を購入する予定である。本研究により得られた成果を,鋳造工学会と金属学会にて発表するために,福岡-東京間往復と福岡-愛媛間往復に必要な旅費と宿泊費を算出した。また,海外での成果発表も行う予定でいる。試料観察には,EBSDやEPMAを利用するので,使用料を九州大学が定める規定に従い計上した。なお,成果報告を国内外の金属,鋳造,結晶成長に関する学会誌に報告する予定であり,予測される投稿料を計上した。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] 太陽電池用多結晶シリコンの初期凝固組織制御2011
Author(s)
内野隆志, 石橋主税, 淵上遥平, 成田一人, 宮原広郁
Organizer
平成23年度 日本金属学会九州支部 - 日本鉄鋼協会九州支部 - 軽金属学会九州支部 共催, 合同学術講演大会
Place of Presentation
九州大学筑紫キャンパス
Year and Date
2011年06月11日