2011 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質連続リフォールディング法におけるインターフェースとしての機能膜の開発
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23760718
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大橋 秀伯 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (00541179)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | タンパク質 / リフォールディング / 連続法 / インターフェース / 機能化高分子膜 / リニアポリマー / プラズマグラフト重合 / 低温パーオキサイド法 |
Research Abstract |
タンパク質は高い反応性・基質特異性を持ち、幅広い応用用途を持つ。現在大腸菌によるタンパク質の大量発現が可能となっているが、発現したタンパク質に活性を持たせるためにはタンパク質を3次元に正しく折り畳むリフォールディングの過程が必要不可欠である。 タンパク質の連続リフォールディング技術は、現行のバッチ式に対し大量生産が可能であるため将来的に大きな需要が見込まれる。本研究では、連続法の特徴的なインターフェースであるタンパク質とバッファーの接触界面に「機能性高分子膜」を用いることで、高効率なリフォールディングを目指している。 直鎖型リニアポリマーはリフォールディング介助効果を示すことが知られている。リニアポリマーを多孔質基材の細孔表面に固定化して機能膜を作成するために、本研究ではプラズマグラフト重合法を採用した。23年度においては、リニアポリマーとしてポリイソプロピルアクリルアミドを選定し、これをグラフト固定化した機能膜を作成した。この際、細孔径の異なる多孔質基材(10~200 nm)を使用し、またグラフトポリマー量の異なる機能膜を複数作成した。リゾチームをモデルタンパク質とし、機能膜に変性リゾチームを透過希釈させることで、リフォールディング効率が従来のバッチ法に比べて約20%向上することを見出した。またリフォールディングの難しいCABタンパク質の活性評価手法の確立も行った。 また通常プラズマグラフト重合法はパーオキサイド基を重合開始基として使用するため、反応開始に80℃程度必要であるが、研究の過程において低温(室温~40℃)で進行するプラズマグラフト重合法を見出した。ドデシルスルホン酸ナトリウムを反応溶液中に添加することで、正電荷・負電荷を帯びたモノマー・中性モノマー・アクリルアミド系・スチレン系モノマーに至るまで通常重合が難しいモノマーもグラフト固定化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高分子機能膜によるリフォールディング介助機構の解明に向けた研究に関しては、おおむね予定通りに進行しているが、これに加え研究の過程において、低温で進行するプラズマグラフト重合法を新たに見出した。例えば四級アンモニウム基を持つモノマーやモノマー化したタンパク質などは熱を加えるとその機能が失われてしまうことが知られているが、本手法を用いればこれら機能分子を失活させることなくグラフト固定化することが可能となる。これは当初の想定にはなかった新しい発見であり、新機能性材料の開発へと発展する可能性を秘めていると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度はポリイソプロピルアクリルアミドをグラフトした種々の機能化高分子膜を作成したが、24年度はこれをさらに発展させ、より高いリフォールディング介助効果を示すリニアポリマーをグラフト固定化した機能化高分子膜を作成する。スルホベタインは負と正の電荷(スルホン酸基と四級アンモニウム基)を一分子内に有する機能性分子であり、リフォールディングを大きく介助する分子として知られている。四級アンモニウム基は一般に熱に弱いため、従来のプラズマグラフト重合法での重合は困難であったが、23年度に新たに開発した低温プラズマグラフト重合法を用いてスルホベタインリニアポリマーグラフト機能膜の合成を試みる。 23年度に作成した膜及び24年度に作成する種々の膜を用いて、細孔径及びグラフトポリマー密度・性質がリフォールディング効率に与える影響を評価する。細孔径がタンパク質サイズ程度に小さくなると、タンパク質分子は孤立化し、タンパク質同士の凝集・不活化を抑えられるコンパートメント効果の発現が期待される。またタンパク質と接するグラフトポリマー密度・性質はリフォールディング効率に大きな影響を与えることが期待される。リフォールディング効率の評価に用いるタンパク質として、23年度に用いたリゾチームに加えて、一般にリフォールディング効率が低いことが知られるCABタンパク質を用いることで、高分子機能膜による連続リフォールディング法の優位性を示していく。 23年度に研究を通じて開発された低温プラズマグラフト重合法に関しては、機構解明による更なる応用範囲の拡大が期待される。ドデシルスルホン酸ナトリウムの機能を界面活性作用・塩作用・アルキル鎖の疎水性相互作用・化学的相互作用などに分解し、支配的な機能を見出すとともに、モノマー種と重合速度の関係性などから活性種の性質を調査するなどの検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費の使用に際して、高分子機能膜によるリフォールディング介助機構の解明に向けて当初の計画に沿った物品購入を行うと共に、23年度に見出した低温プラズマグラフト重合法の機構解明に向けてドデシルスルホン酸ナトリウムの機能を精査するための種々の薬品及びモノマー購入を行う予定である。また得られた研究成果を国内外に発信するために、国際学会・国内学会にて発表を行うための予算と、論文執筆にあたって必要となる英文校正・別刷り代を計上する予定である。
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Research Products
(10 results)