2011 Fiscal Year Research-status Report
バイオ燃料電池の高性能化へ向けた酵素電極の新規ナノ構造制御
Project/Area Number |
23760726
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田巻 孝敬 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (80567438)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | バイオ燃料電池 / レドックスポリマー / プロトン伝導 / グラフト重合 / 失活抑制 / 表面修飾 / カーボン / 酵素反応 |
Research Abstract |
酵素を触媒に用いることで、グルコースなど生体に安全・安心な燃料が利用できるバイオ燃料電池の高電流密度化へ向けて、酵素電極のナノ構造制御を行っている。バイオ燃料電池の電流密度を増加させるためには、酵素の電極表面への物理吸着による変性・失活の抑制と、電極内のプロトン伝導と酵素活性の両立が必要である。そこで、本研究では電極を構成するカーボン微粒子表面を、プロトン伝導性を有し酵素の物理吸着を抑制するスルホン化と、酵素から電極への電子伝導を担うレドックスポリマーにより二段階修飾する。本年度は、カーボンブラックへメチルスルホン酸基を導入したうえでレドックスポリマーをグラフト重合することで、二段階修飾を行った。滴定および電気化学測定により、カーボンブラックが二段階修飾されたことが示された。しかし、酵素を吸着させて活性評価を行ったところ、未修飾カーボンブラックへ吸着させた場合と吸着酵素活性は大きくは変わらなかった。そこで、カーボンブラック表面をより親水化するために、酸処理を行った。親水化により、吸着酵素活性は増加した。また、親水化により導入される官能基は二段階修飾反応の足場ともなるため、親水化したカーボンブラックではメチルスルホン酸基の導入量が大幅に増加した。親水化後に導入されたメチルスルホン酸基量は、貴金属触媒を用いた固体高分子形燃料電池で性能が向上した導入量と同じオーダーであったことから、高電流密度バイオ燃料電池で必要とされるプロトン伝導性は付与できたと考えられる。しかし、親水化及びメチルスルホン基の導入を行ったカーボンブラックは、親水化のみを行ったカーボンブラックと比較して、吸着酵素活性が低下した。これは、導入したスルホン酸の酸環境による影響と考えられるため、メチルスルホン酸基が導入されたカーボン表面から酵素を隔離する手法が必要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で実施する酵素電極のナノ構造制御へ向けて重要な技術である二段階修飾法の開発に成功し、また親水化によりメチルスルホン酸基の導入量が増加した。メチルスルホン酸基の酸環境により、吸着酵素活性は低下したが、研究計画の当初より想定されていた結果であり、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初より想定されていたことではあるが、プロトン伝導性に必要なメチルスルホン酸基を充分量導入したカーボンブラックでは、吸着酵素活性が低下した。そこで今後は、スルホン酸の酸環境による酵素活性の低下を抑制するために、酵素をカーボン表面から物理的に隔離する手法を検討する。具体的には、カーボン表面を修飾剤により薄膜被覆する手法や、レドックスポリマーのグラフト重合量を増加させるための手法を検討する。これらの表面修飾が、吸着酵素活性へ与える影響を評価することで、バイオ燃料電池の高電流密度化へ向けた知見を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が発生した主な要因は、今年度に得られた成果を発表し、かつ関連研究を行っている研究者とのディスカッションを行うために参加した海外学会の出張日程が新年度(4/1)にかかったためである。このため、実質的な次年度繰越額はなく、当初の計画をもとに研究費を使用する。
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Research Products
(28 results)