2011 Fiscal Year Research-status Report
ドライ系バイオマスの多段熱分解を利用した選択的物質回収
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23760728
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長谷川 功 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20346092)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | バイオマス / 熱分解 / リグニン |
Research Abstract |
近年、再生可能資源として木質バイオマスの活用が検討されている。しかしバイオマスの主要成分の1つであるリグニンは、フェニルプロパン誘導体を骨格とし三次元的に複雑に結合した化学構造ゆえに特定の有用物質への選択的な転換が困難とされ、現状ではエネルギー回収程度しか行われていない。経済的に成立する資源としてバイオマスを普及するには、利用用途のなかったリグニンのフェノール類構造を上手に利用して、付加価値の高い化学原料を収率よく回収することが鍵になる。本研究の本年度では、主としてリグニン樹脂の原料への転換を目的に、各種低分子化法を試みた。具体的には、多段熱分解のうちリグニン熱分解を実施した。その結果、溶剤による抽出リグニンを400℃で急速熱分解したときに得られる低分子タールを用いて、熱硬化性樹脂を作製することができた。また、酸化分解法によって得られた低分子リグニンは、官能基の付加や芳香環の一部開環のため、有機酸の回収が適していることが明らかになった。以上より、分解法を選択することでリグニンから芳香族あるいは脂肪族ポリマーの原料へ転換できることが示唆された。低分子リグニン(熱分解タール)の性状としては、常温で軟化した。これをヘキサミンと混合し加熱した際のDTA分析した結果についても、低分子リグニンのみでは発熱は認められなかったが、ヘキサミンと混合したものは硬化による発熱が測定された。よって、抽出リグニンを熱分解して生成したタールは、低軟化点であり架橋剤により硬化反応を起こすことから、樹脂原料として適していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は、初年度としてはおおむね順調に進展している。学会での発表もできた。予想通りの結果が得られ、進捗状況も順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度はリグニン成分の熱分解を出発物質としたが、次年度はこれを木質バイオマスから多段熱分解し、最も高温の熱分解でリグニンリッチなタールから樹脂原料を製造することを試みる。また、揮発生成したヘミセルロース由来タールの気相反応特性を把握し、架橋構造と気相分解の関連性を定量的に記述できるモデルを構築する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分析装置等は既存のものを利用していき、本研究で必要な試薬やガス、配管部品の購入に研究費を使用する。また、国際学会での研究成果を発表する予定である。その旅費、参加費にも充てる。
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