2012 Fiscal Year Annual Research Report
ドライ系バイオマスの多段熱分解を利用した選択的物質回収
Project/Area Number |
23760728
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長谷川 功 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20346092)
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Keywords | バイオマス / 熱分解 / ヘミセルロース |
Research Abstract |
多糖類由来のタールは脂肪族性であり改質も容易でケミカルズへの転換も期待できる。一旦、構成成分に分離したのち熱分解することで生成物の選択性が高まると考えられるが分離法の多くは水溶液を使用し、消費エネルギーの観点から乾燥バイオマスには不適である。そこで本最終年度は、構成成分の分解温度域に着目し、熱分解を二段階で実施することでリグニン由来の重質タールの生成を抑え、有効利用しやすい軽質タールを回収する方法の検討を行った。 まず、各構成成分のTGを用いた熱分解にともなう重量変化曲線を調べた。ヘミセルロースの主成分であるキシランは300℃までに熱分解が大きく進行した。それに対し、セルロースは350℃から急激に熱分解が進行し、リグニンは比較的低温から熱分解が始まるが、熱分解速度は遅いことがわかった。これは、リグニンが複数の構成ユニットから成り、結合エネルギーに分布があるためと考えられる。よって、比較的低温での分解操作でキシラン由来のタール成分の選択性を高めることが可能と示唆されるので、以下ではヒノキの低温での熱分解生成物について調べた。 タール生成量削減を目的として、構成成分からの揮発物の二次分解反応による変化を調べたところ、キシランの熱分解を常温から800℃まで昇温、二次分解温度800℃で行った場合、タール成分がフランと水のみになった。これは、キシランがキシラン単量体→フルフラール+2水→フラン+一酸化炭素+2水の反応式に従ってフルフラールを経てフランを生成したためと考えられる。このことより、キシランの主分解温度より少し高温の300℃でヒノキを熱分解し、揮発物の二次分解反応を行うことでフランが選択的に回収できることがわかった。 以上より、2年間の研究において、リグニンの熱分解では樹脂原料を製造し、バイオマスからは300℃までの低温でキシランをフランとして回収する多段熱分解法を開発した。
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