2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23760734
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 広和 北海道大学, 触媒化学研究センター, 助教 (30545968)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | セルロース / 加水分解 / 炭素 / 触媒 / グルコース |
Research Abstract |
各種炭素を触媒に用いてセルロースの加水分解反応を実施した。本スクリーニングを行うにあたり、活性点である可能性がある表面官能基の量に着目した。具体的には酸素官能基量が多いと予想されたアルカリ賦活炭K20、K26、MSP20と、逆に酸素官能基をほとんど持たないと思われたカーボンブラックXC72、BP2000を選択した。結果、アルカリ賦活炭K26が最も高い活性を示し、この時のグルコース収率は36%であった。これは、予備検討で見出していたメソポーラス炭素CMK-3を用いた場合のグルコース収率16%よりも2倍以上高い値である。また、K20、MSP20も良好な触媒活性を示した。一方、カーボンブラックXC72、BP2000は不活性であり、予想通りの結果を得ることができた。次に表面官能基について知見を得るため、各炭素を拡散反射FT-IRにより分析した。K26はC=OならびにC-O結合に帰属される吸収を示し、カルボキシル基やフェノール性水酸基などの官能基の存在が示唆された。官能基の効果について定量的に評価するため、Boehmの滴定法により定量を行った。K26上のカルボキシル基は270μmol/g、ラクトン基は310μmol/g、フェノール性水酸基は310μmol/gであった。一方、不活性なXC72やBP2000は3つの官能基を合わせても200μmol/g以下であった。これらの結果は酸素官能基がセルロースの加水分解に関与していることを示唆している。さらに、活性な炭素であるMSP20の官能基を同様に定量したところ、カルボキシル基とラクトン基は合わせても180μmol/gしかなく、フェノール性水酸基は280μmol/gと豊富であった。フェノール性水酸基が加水分解反応に寄与している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は当初、(1)酸素官能基量の異なる各種炭素のスクリーニングを行い、セルロースの加水分解に高活性を示す炭素触媒を見つける、(2)炭素の表面官能基をFT-IR、滴定、NMRにより定性・定量分析する、二点としていた。まず一点目については、研究実績の概要で述べたようにアルカリ賦活炭K26が高い触媒活性を持つことを見出し、対照試料であるカーボンブラックが不活性であることを明らかにした。よって、計画通りに進行した。二点目については、NMRによる官能基定量は全炭素原子数に占める官能基の、あるいは官能基に隣接する炭素原子数の割合が低いこと、炭素担体のためシグナルのブロードニングが大きく感度が良くないことが問題であり、現時点では達成できていない。しかし、FT-IRによる官能基の定性分析に加え、三種の塩基を用いた滴定法により炭素上の酸性官能基を定量できた。これらの知見を元に触媒活性を持つ官能基を提案した。従って、本研究は計画に則り概ね順調に進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討では異なる炭素間で触媒活性を比較したため、官能基だけでなく形状的な因子も活性の差異の原因になった可能性がある。そこで、次年度ではこの物理的な因子を排除するため炭素触媒としてK26のみを用い、熱処理により各官能基を選択的に分解する。つまり、カルボキシル基は200~400℃で、ラクトン基は400~600℃で、フェノール性水酸基は600~800℃で分解する。以上の方法により部分的に官能基を除去したK26のセルロース加水分解活性を調べれば、活性な官能基をより明確に決定できると期待できる。また、例えばフェノールなどのモデル触媒を用いてセルロースの加水分解を行い、上記知見との整合性を検証する。次に触媒作用機構を検討する。まず、グリコシド結合がどのように切断されるのか明らかにするため、求核試薬の添加効果、イオン強度の影響、活性化パラメータを調べ、グリコシド結合を攻撃する化学種ならびに反応中間体の状態について検討する。さらに、セルロースが炭素上でどのように活性化されているか知見を得るため、モデル基質としてセロビオースを用いて吸着実験を行い、その絶対量ならびに吸着平衡を支配している要因(エンタルピーまたはエントロピー)を明らかにする。さらにセロビオースを炭素に吸着させてIRやラマン分光分析を実施し、グリコシド結合の状態の変化を観察する。以上の結果を総合的に解釈し、セルロースの炭素触媒による加水分解反応機構を提案する。
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Research Products
(3 results)