2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23760737
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中川 善直 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10436545)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 水素化 / シクロヘキサノール |
Research Abstract |
本年度は、グアイアコール(o-メトキシフェノール)の水素化・水素化分解によるシクロヘキサノール合成について中心的に研究を行った。シクロヘキサノールは石油化学における芳香族の主要な利用先であり、バイオマスからの代替合成の重要性は大きい。 シクロヘキサノールへの合成ルートとして、(1)新規コバルト系触媒による1段合成、(2)貴金属触媒を組み合わせた多段合成 の2通りを試みた。 (1)では、シリカ担持コバルト触媒およびこれに少量の貴金属添加による修飾を行った触媒を使用し回分式反応装置により水素加圧下反応を行った。ヘプタン等の低極性溶媒を使用し水素圧1 MPa程度の条件が有効であり、最大で約90%の収率でシクロヘキサノールを得た。この収率はバイオマス由来物質からのシクロヘキサノール合成としては例がない。ただし、コバルト系触媒は活性な金属状態が不安定で、不動態化処理を施したとしても酸化劣化が起こりやすく触媒の長期保存での活性低下を起こすことも判明した。次年度では触媒の活性化の条件等を改良し安定な性能が得られる触媒系を開発する予定である。 (2)では、芳香環の水素化、メトキシ基の水素化分解によるシクロヘキサンジオール合成、ジオールの水素化分解によるシクロヘキサノール合成の3段階で行った。最初の2段階は市販触媒である炭素担持貴金属触媒(ロジウム、パラジウム、ルテニウム)を用いることで良好に進行した。最後のジオールの部分水素化分解が最も困難なステップとなるが、研究代表者らによってグリセリン水素化分解用に開発してきたイリジウム-レニウム系触媒がこの反応にも有効であることを見いだした。この3段階の反応により、80%以上のシクロヘキサノール収率を得ることができた。次年度ではさらなる収率向上と3段階を2段階に減らす方策に着手する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の大目的であるリグニン由来物質の化学原料化について、シクロヘキサノールへの転換が可能であるめどがついた。ただし、一つの目標である芳香環を残したままのフェノール等への転換には至っておらず、進んでいる点と進んでいない点があることを踏まえおおむね順調とした。
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Strategy for Future Research Activity |
シクロヘキサノール合成については、1の項に記した通り、コバルト系触媒の改良と活性化の方法、および貴金属系触媒の組み合わせにより2段階での合成ルートの確立を行う。芳香族化成品(フェノール等)合成については、水素化を抑えるため高温が必要になることが予想されるため、高温(max. 300℃)対応の反応装置を23年度後半に導入し、触媒開発を進める体制を整えた。予備実験で活性を示したコバルト-レニウム系触媒等により24年度に開発を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度研究費は双方の実験で必要となる消耗品に主に使用する予定である。なお、23年度残額は3月末の学会への出張および参加費として使用済みである。
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Research Products
(6 results)