2012 Fiscal Year Research-status Report
酵素活性部位の空洞構造が直鎖アルカンからの選択的アルコール異性体生成に及ぼす影響
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23760739
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮地 輝光 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (40452023)
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Keywords | 酵素反応 / 分子認識 / 触媒・化学プロセス / 直鎖アルカン / アルコール |
Research Abstract |
本研究では、n-アルカンからアルコールへの位置・立体選択性に、アルカン水酸化酵素活性部位の空洞構造が及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。平成24年度は、以下の2つを達成した。 ①鉄含有メタン酸化酵素およびアンモニア酸化酵素のn-アルカンからアルコール異性体への選択性:X線結晶構造解析による酵素活性部位構造が明らかであり、且つ炭素鎖の短いn-ブタン、 n-ペンタンを基質とするアンモニア酸化酵素(AMO)および鉄含有メタン酸化酵素(sMMO)のアルカンからアルコールへの位置・立体選択性を明らかにした。具体的には、AMOを合成する微生物2種類およびsMMOを合成する微生物1種類を調製し、これら菌体を用いて炭素数 4~8 の n-アルカンからのアルコールへの酸化反応を行った。その結果、AMOの2-アルコール立体異性体への選択性は、n-アルカンの炭素数に依存し、炭素鎖数が増えるに伴い、R-2-アルコールへの選択性が高くなることを明らかにした。一方、sMMOの2-アルコール立体異性体への選択性もn-アルカン炭素鎖数に依存し、炭素数が増えるに伴いS体の2-アルコールへの選択性が高くなった。これら活性中心金属種の異なる2種類の酵素において、2-アルコール立体異性体への選択性はn-アルカンの分子サイズに依存することが明らかになった。この結果は、「基質結合部位を形成するアミノ酸残基や活性点の種類に寄らず、基質結合部位空洞に占める基質n-アルカンの割合に依存する」という仮説を支持する。 ②シトクロムP450BM-3のn-アルカンからアルコール立体異性体への選択性:野生型のシトクロムP450BM-3によるn-ペンタン、n-ヘキサン酸化反応を行い、2-アルコールへの立体選択性を調べた。これら反応において生成する2-アルコールはほぼラセミ体であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施の建物の耐震工事(平成24年10月から平成25年3月)が行なわれたことにより,培養機器使用や実験機器使用が制限された。そのため、微生物培養や酵素反応実験が予定通りに進行せず、研究の進捗が遅れた。具体的には、平成24年度に予定していた、基質結合部位空洞サイズを変えたシトクロムP450BM-3の調製および、これら変異酵素を用いたn-アルカンからアルコールへの酸化反応実験が達成できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
基質結合部位空洞サイズを変えた種々のシトクロムP450BM-3を調製する。これら変異酵素を用いたn-アルカンからアルコールへの酸化反応を行ない、ガスクロマトグラフで反応生成物を定量することで生成物選択性を調べる。これら結果に基づき、生成物選択性に空洞サイズが及ぼす影響を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究実施建物の耐震工事により研究の進捗が遅れたため、研究費に未使用額が生じた。未使用額は、以下に述べる次年度の研究に使用する。 酵素合成を行なうための試薬および培養器具が必要である。また、酵素反応生成物分析のために,ガスクロマトグラフィー用カラムやガラス器具が必要である。これらの購入費用を計上する。
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Research Products
(2 results)