2011 Fiscal Year Research-status Report
d10電子状態の金属リン化物光触媒を用いた水分解反応
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23760742
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
齊藤 信雄 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (40313572)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 半導体光触媒 / 金属リン化物 / 水分解反応 / 水素製造 |
Research Abstract |
光エネルギーを化学エネルギーに変換できる光触媒を用いた水分解は理想的な水素生成法であり、新規な触媒の開発は興味深い課題である。光エネルギーとして太陽光を有効に利用することができれば、「太陽光+水+光触媒」の組み合わせのみでクリーンな水素を得ることが可能で継続可能な水素エネルギー社会を実現できる。本研究では、価電子帯のポテンシャルが高く、可視光領域の光を吸収できる金属リン化物に着目し、d10電子状態を持つZnGeP2,ZnGeP2-ZnSnP2固溶体、GaP、およびGaP-ZnS固溶体の作製および光触媒活性について調べることを目的にする。 平成23年度はZnGeP2,ZnGeP2-ZnSnP2固溶体およびGaP-ZnS固溶体の作製方法の検討、および光触媒作用について調べると共に、それらの物性評価、密度汎関数法によるバンド構造を行った。ZnGeP2はカルコパイライト型の結晶構造を持ち、バンドギャップは2.34 eVの半導体であり可視光領域に光吸収を持つ。Zn,Ge,Pの単体を化学量論比で混合し、石英封入法により目的物質を作製した。助触媒としてRuO2を含浸法により担持し、RuO2担持ZnGeP2光触媒とした。光触媒活性はメタノールを犠牲試薬として用い、水素生成について調べた。紫外光照射により顕著な水素生成、さらに可視光においてもわずかではあるが水素生成が見られ、ZnGeP2は可視光応答型光触媒であることを明らかにした。また、ZnGeP2-ZnSnP2固溶体はZnGeP2よりも高い水素生成活性を示した。バンド計算からZnGeP2は間接遷移型半導体であるのに対して、ZnGeP2-ZnSnP2固溶体は直接遷移型半導体であることを示し、直接遷移型半導体が高い光触媒活性を持つことを明らかにした。GaP-ZnS固溶体においても可視光照射で水素を生成できる光触媒となることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画は順調に実施することができ、ZnGeP2の作製条件、物性評価、バンド計算および光触媒活性について有用な情報を得ることができた。d10電子状態を持つZnGeP2が新規な可視光応答型の水素生成用の光触媒として機能すること、さらにZnSnP2と固溶化することにより活性が増加することなど、これまでにない知見が得られた。また、バンド計算による電子状態の解析から固溶体化することによって励起効率が高い直接遷移型に変化し、活性が増加する機構についても解明することができた。ZnGeP2の光触媒作用は触媒粒子の粒子径や比表面積と密接に関連することを見出し、今後、光触媒粒子をサブミクロンサイズにすることにより高い光触媒活性の発現が期待できるとの指針が得られた。さらに本年度計画していなかったGaP-ZnS固溶体についても固溶体の作製条件や光触媒活性を調べることができ、d10電子状態を持つ金属リン化物が可視光応答型の光触媒として有用であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で得られた知見を活かし、さらに光触媒の作製法の検討および助触媒の担持条件を探索し、d10電子状態の典型金属リン化物であるZnGeP-ZnSnP2およびGaP-ZnSの光触媒活性を高めることを行う。平成23年度に購入した遊星型ボールミルを用いて光触媒を粉砕し、粒子径の制御を行うと共に、粉砕した光触媒を再焼成して粒子表面の欠陥構造および結晶性を制御し、光触媒活性との関連を調べる。さらに、申請書の研究計画には記載していないが、金属リン化物をアンモニア窒化することにより、窒素を光触媒に導入し、価電子帯のポテンシャルを制御して水を完全分解できる金属リン化物系光触媒を創製する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請書の研究費の使用計画に基づき、研究遂行に必要な薬品や消耗品を購入する。また、研究成果発表のための旅費として使用する予定である。
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[Journal Article] Emission spectroscopy of divalent-cation-doped GaN photocatalysts2011
Author(s)
Takeshi; Harada, Takashi; Ikeda, Shigeru; Matsumura, Michio; Saito, Nobuo; Inoue, Yasunobu; Harada, Yoshiyuki; Ohno, Nobuhito; Maeda, Kazuhiko; Kubota, Jun; Domen, Kazunari
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Journal Title
Journal of Applied Physics
Volume: 110(11),113526
Pages: 1-7
DOI
Peer Reviewed
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