2011 Fiscal Year Research-status Report
3次元培養組織評価に向けた電気化学チップデバイスの開発
Project/Area Number |
23760745
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊野 浩介 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (00509739)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | バイオMEMS / 電気化学測定 / 網羅的検出法 / 3次元培養細胞 / 微小電極 / レドックスサイクリング / Lab on a chip / 新規測定システム |
Research Abstract |
初年度は、作製した電気化学チップデバイスの基本的な電気化学特性を調べた。特性評価のために、微小な酵素膜を作製し、この酵素活性を電気化学チップデバイスで評価した。酵素にはアルカリホスファターゼとβ-ガラクトシダーゼを用いた。これらの酵素活性を評価したところ、酵素の電気化学イメージングに成功した。この結果から、作製した電気化学チップデバイスは、これらの酵素を介した細胞イメージング・スクリーニングが可能である事が示された。また、酵素の濃度に依存したシグナルの取得に成功した事から、作製した電気化学チップデバイスに定量性がある事が示された。 この結果を踏まえ、3次元培養細胞を作製し、この細胞を電気化学的に評価した。細胞には、胚性幹細胞(ES細胞)を用いた。ES細胞は、その分化の程度によって、細胞内のアルカリホスファターゼの量が変化する事が知られている。本研究では、この細胞内のアルカリホスファターゼの活性を評価し、この値からES細胞の分化評価を行った。本研究では、3次元培養と電気化学測定を、同時にデバイス上で行う事を目標としているが、初年度は、デバイス外で作製した3次元培養細胞を用いた。3次元的に培養するためには、Hanging drop法を用いた。作製した3次元培養細胞を評価したところ、細胞からのシグナルの取得に成功した。また培養時間が増えるにしたがって、単位体積当たりのアルカリホスファターゼ活性が減少しており、ES細胞の分化の様子を確認できたと考えられる。 このように初年度は、多点電気化学チップデバイスの電気化学特性評価と3次元的に培養したES細胞の分化評価に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、3次元培養組織の活性評価を目標としたが、3次元培養組織評価だけでなく、1細胞からの分泌タンパク質の検出といった別の評価対象でも研究成果を得ており、当初の計画以上に進展していると考えている。また、クシ型電極やリング電極などの様々な形状の電極を組み込んだ多点電気化学チップデバイスの作製に成功しており、当初計画よりも迅速で簡便に作製できるデバイスを提案している。 また、測定点間のCross talkに関する詳細な検討を行っており、多点電気化学測定における示唆を行えたと考えている。 また、超高感度測定のためのナノ流路を組み込んだデバイス・システムに開発に成功しており、当初予定していなかった超高感度な測定が可能になっている。このシステムについて、まだ予備検討の段階ではあるが、2年目以降においても有用なツール・システムになり得ると考えられる。 このように、当初予定していた以上に研究成果がでており、本研究は、当初の計画以上に進展したと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目も引き続き、3次元組織の評価を行う。2年目は、ES細胞だけなく、間葉系間細胞や肝細胞を用いて、本システムの応用を広げる。これら3次元培養組織を作製し、様々な薬剤を添加して、その応答を調べる。また、電気化学評価した後の3次元培養組織を回収して、遺伝子評価などを行い、得られた電気化学シグナルとの比較を行う。これらの結果をまとめ、細胞機能解析を行う。 この他に、超高感度化に向けたデバイスのデザイン・作製を行う。初年度で一部成果を得ているが、ナノ流路を組み込んだデバイス・システムの開発を進め、超高感度な多点電気化学測定システムとして提案する。この超高感度多点電気化学測定チップデバイスを用いて、3次元培養組織の評価を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度は、ES細胞を用いた研究において有用な情報が得られたため、ES細胞に焦点を当てて電気化学チップデバイスの開発を行った。したがって、前年度で使用予定であった酵素やメデェエータ、抗体などの購入を行わなかったため、未使用分の研究費が発生した。本年度は、これの試薬を購入し、研究を行う。 研究費は、主に、デバイス作製のための試薬と細胞培養用の試薬の購入に使用する。測定システムのデータ収録ボードなどの機器に関しても経費を計上する。 この他に研究成果発表の旅費に関する経費を計上する。国外の学会発表として、台湾とアメリカを予定している。国内の学会に関しては、3-4個程度の発表を予定している。
|
Research Products
(8 results)