2012 Fiscal Year Research-status Report
3次元培養組織評価に向けた電気化学チップデバイスの開発
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23760745
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊野 浩介 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (00509739)
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Keywords | 分析化学 / 電気化学 / 生体関連化学 / マイクロ・ナノシステム / バイオMEMS / 電気化学イメージング / 細胞解析 / 微小電極 |
Research Abstract |
2年目は、初年度に開発した電気化学チップデバイスを用いて、細胞の機能解析を行った。具体的には、1細胞が分泌したタンパク質の検出に成功した。開発したデバイスによるシグナル増幅ができるため、高感度な電気化学測定が可能になり、1細胞からの微弱なシグナルの取得に成功できたと考えられる。 また、3次元的に培養した生体様組織を作製し、その生体様組織の評価を行った。具体的には、胚性幹細胞(ES細胞)を用いて、その3次元培養体である胚様体(EB)の分化評価を行った。ES細胞の分化評価は、細胞が持つアルカリホスファターゼの量で行われているが、本研究では、このアルカリホスファターゼ活性を電気化学的に評価した。開発した電気化学チップデバイスを用いる事で、アルカリホスファターゼ活性を評価する事に成功し、この結果から、開発した電気化学チップデバイスはES細胞の分化評価への応用が可能である事が示された。 この他にデバイス・システムの高機能化を行った。初年度までに開発した電気化学チップデバイスにナノ構造を組み込む事で、さらに高感度な測定を可能にした。また、デバイス作製に関する技術に関して、新しい報告を行えたと考えている。 初年度に開発したデバイスのセンサ間隔は200 μmであったが、2年目では、さらに高密度なセンサデバイスを開発した。具体的には、30 μm間隔にセンサを配置した電気化学チップデバイスの開発に成功した。本デバイスは、測定点が200点を超える高感度な電流計測型チップデバイスにおける最高峰のセンサ密度であると考えられる。このように2年度目では、細胞解析、デバイスの高機能化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
デバイス構造においては、当初予定した構造だけでなく、さらに洗練された構造・システムを組み込み事に成功しており、その点で、当初計画よりも進展していると言える。これらのデバイス・システムは、超高感度測定、高密度なセンサと言った点で、世界最高水準である。開発したデバイスは、細胞解析などのバイオアッセイにおいて、有用なツール・システムである。 一方で、研究計画では評価予定であった肝細胞などの細胞の評価は達成できていない。幹細胞であるES細胞の評価で興味深いデータが得られたため、2年度目までは、ES細胞の評価に焦点を当て研究を進めたためである。したがって、肝細胞などの評価は3年目で行う予定である。 研究計画の段階では検討していなかった新しい測定システムの開発にも成功した。この測定システムを用いる事で、開発した電気化学チップデバイスの応用が広がると考えられる。この測定システムについては、2年目の時点では基礎的なデータしか得られていないものの、この測定システムが完成されれば、新規測定ツールとして期待できる。 このように、当初予定していた以上に研究成果がでており、本研究は、当初の計画以上に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目も引き続き、3次元組織の評価を行う。3年目では、ES細胞だけなく間葉系間細胞や肝細胞の評価を行い、開発した電気化学チップデバイスの応用を広げる。これらの薬物応答や分化、増殖を評価する事で、これらの細胞に関する新しい知見を得る。 この他に、超高感度化に向けたデバイスのデザイン・作製を行う。前年度までに一部成果を得ているが、ナノ構造を組み込んだデバイス・システムの開発を進め、超高感度な多点電気化学測定デバイス・システムとして提案する。この超高感度多点電気化学測定チップデバイスを用いて、3次元培養組織の評価を行う。また、1細胞解析への応用・展開を検討する。 前項でも記したが、作製した電気化学チップデバイスによる新しい測定システムの開発をさらに進める。2年目では、基礎的な測定システムの評価までしか終わっていないため、3年目では、感度などに関する検討を行う。また、バイオサンプルの評価を行い、この測定システムを完成させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度までは、ES細胞を用いた研究において有用な情報が得られたため、ES細胞に焦点を当てて電気化学チップデバイスの開発を行った。したがって、前年度で使用予定であった細胞や、その細胞に関する培養費用、また、酵素やメデェエータ、抗体などの購入を行わなかったため、未使用分の研究費が発生した。本年度は、これらの試薬を購入し、研究を行う。 研究費は、主に、デバイス作製のための試薬と細胞培養用の試薬の購入に使用する。測定システムの高機能化のためのデータ収録ボード、スイッチングシステムなどの機器に関しても経費を計上する。 この他に研究成果発表の旅費に関する経費を計上する。国外の学会発表として、ドイツでの発表を予定している。国内の学会に関しては、3-4個程度の発表を予定している。 3年目では、3-4報程度の論文投稿を予定しており、これらに関する費用に研究費を充てる予定である。
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Research Products
(21 results)