2011 Fiscal Year Research-status Report
トランスジェニック鳥類作製技術を用いたTGFβ含有卵によるアレルギー治療法の開発
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23760753
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河邉 佳典 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30448401)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | トランスジェニック鳥類 / アレルギー / TGFβ / エピトープ / 卵管特異的発現 / ニワトリ / モデルマウス |
Research Abstract |
本研究では、トランスジェニック鳥類作製技術を用いて、卵中に生産させた免疫抑制性サイトカインTGFβを経口摂取することで、腸管での免疫系を活性化させ、効果的に経口免疫寛容誘導可能なアレルギー治療法の開発を行うことを目的としている。はじめに、これまで作製済のスギ花粉症アレルゲンエピトープを生産する遺伝子導入ニワトリが産卵した卵白を、スギ花粉症モデルマウスへ経口投与した。その結果、くしゃみ回数ならびに血清中の抗原特異的IgE量を減少させることができた。このことから、エピトープペプチド含有卵白がアレルギー治療に適応できうることを示せた。次に、TGFβ遺伝子のクローニングを行った。MEFからRT-PCRにより取得したTGFβ遺伝子は、遺伝子導入ニワトリでの発現に実績のあるニワトリβアクチンプロモーターで発現調節できるユニットとしてレトロウイルスベクターへ組み入れた(PactT)。ウイルス生産用細胞からレトロウイルスベクターを生産させ、超遠心機で濃縮することで高力価ウイルス溶液を調製し(PactT:1.8-3.6E9 [IU/ml])、ニワトリ胚への遺伝子導入を行った。PactTでは、導入直後から胚の死亡が観察され、ふ化個体も平均5%と低く、またふ化直後に死亡が観察された。そこで、目的遺伝子を、申請者らが開発した卵管特異的に発現させる人工合成プロモーターで発現調節できるベクターシステムへ組入れた(OTOt)。高力価のレトロウイルスベクターを生産させることができた(0.6-2.2 E9 [IU/ml])ので、ウイルス溶液をニワトリ胚へ注入した。卵管特異的発現型のOTOtを用いた場合では、平均26%(12/47羽)のふ化率で遺伝子導入ニワトリを作製することができた。性成熟後メンドリが産卵を開始し始めたので、現在卵中での解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子導入ニワトリが生産したアレルゲンエピトープ含有卵白をアレルギーモデルマウスへ経口投与し血中のIgE量等を評価したところ、有効な結果を得ることができたことから、免疫調節関連タンパク質を発現する遺伝子導入ニワトリ由来の卵白がアレルギー治療に適応できることを示した。これらの成果を複数の国内学会に報告した。さらに効率的なアレルギー治療を目的として免疫抑制性サイトカインであるTGFβを発現する遺伝子導入ニワトリを作製するために、TGFβ遺伝子のクローニングを行い、遺伝子導入ニワトリ作製用のレトロウイルスベクターに組入れた。同ベクターを用いてニワトリ胚へ遺伝子導入を行い、遺伝子導入ニワトリを作製したところ、全身発現型ではふ化個体が得られなかった。一方、申請者らが開発した卵管組織特異的発現システムを用いたところ、多くの遺伝子導入ニワトリ個体を作出することができた。本年度はおおむね研究計画書どおりに実行することができ、目的を達成することができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したTGFβ遺伝子導入ニワトリが性成熟したため、卵の産卵を開始した。そこで、卵白中をウエスタンブロット法やELISA法により解析することで、生産性や分子構造を評価するとともに培養細胞を用いて卵白由来のTGFβのバイオアッセイを行う予定である。また、アレルギー(OVAおよびスギ花粉症)に対するモデルマウスを作製した後、遺伝子導入ニワトリ由来卵白をマウスへ経口投与させる。マウス血清中の抗原特異的IgE量を測定することや脾臓細胞を培養し、IL-4、INFガンマなどのサイトカイン量の解析ならびにヒスタミン量の定量を行うことで、TGFβ含有卵の有効性を証明していく。あわせて、TGFβは制御性T細胞を活性化させることが期待されるため、TGFβ含有卵の経口投与で、制御性T細胞が誘導されたかどうかを表面マーカーCD4+CD25+Foxp3+を指標にFACSにより解析する。制御性T細胞からのIL-10、TGFβの分泌量を測定し、TGFβ含有卵がTGFβ自身の発現制御を正に調節しているか評価する。経口アレルゲンは腸管上皮細胞層に存在するM細胞のTLRを介して取り込まれることで、M細胞の基底膜側に存在する樹状細胞やリンパ球が活性化されることから、M細胞にターゲッティングされるアレルゲンおよびTGFβの分子改変を行うことで、より効率的な免疫寛容誘導法の確立を行う。これまでの細胞レベルでの解析では得られにくかった個体レベルで腸管免疫を介したアレルゲン特異的免疫寛容メカニズムの解析に適応し、アレルギー予防・治療に役立つ基礎研究へも発展させたいと考えている。卵白中TGFβの機能解析およびアレルギーモデルマウスを用いた腸管免疫寛容系の構築を行い、それぞれの研究項目において次年度も大学院生3名の協力により、研究遂行を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本申請では、全体に対して消耗品の割合が比較的高くなっているが、これは、ウイルス生産、細胞培養のために高価な試薬である制限酵素・核酸抽出キット・抗体・血清・動物細胞用培地・遺伝子導入試薬などの種々の遺伝子工学関連試薬や、プラスチックおよびガラス器具を使用するためである。なお、旅費は関連学会における成果発表と情報収集のために使用し、謝金は英文校閲費のために使用する。その他分として、高度な画像撮影および分析が可能な実験機器のレンタルのために使用する。
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Research Products
(4 results)