2011 Fiscal Year Research-status Report
超音速波動伝播を捉える革新的超高速応答型感圧塗料技術の基盤確立
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23760761
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
沼田 大樹 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20551534)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 感圧塗料 / 衝撃波 / 流体計測 / 可視化 |
Research Abstract |
本研究では、従来は離散点計測しかできなかった高速変動する非定常圧力場を、応答性を大幅に高めた感圧塗料(超高速応答型感圧塗料)を開発して面計測可能とする事を目指す。この技術により、非定常現象が物体表面に誘起する圧力場を時系列的及び空間的に鮮明に可視化計測する事が可能となり、その圧力場情報から非定常現象によって物体に加えられる力の推算が可能となる。また、感圧塗料の応答特性を1次遅れなどの数学モデルで表現し、時間遅れの影響を含む画像群から非定常流れ場を理論的に再構成する画像データ処理アルゴリズムを開発して色素の応答性の限界を画像処理で補い、従来不可能であった計測領域にまで感圧塗料の適用範囲を拡張する事を目指す。これら目的のもと、本年度は、超高速応答型感圧塗料の候補として、特に現時点で最も高い時間応答特性を有するとされる陽極酸化被膜型感圧塗料に注目し、高い時間応答性を実現するために必要となる被膜の形成条件や色素の吸着条件の確立、および超高速応答型感圧塗料に適した色素の選定を行った。また、それと並行して、感圧塗料の時間応答性の評価のための衝撃波管を用いた応答性試験装置の開発やその計測手法の確立も進めた。その結果、陽極酸化被膜型感圧塗料の時間応答特性に大きな影響を与える被膜表面の細孔構造について、その直径および膜厚をコントロールするための被膜形成法を確立することに成功した。本結果により、理論的に高い時間応答性を有すると予測される細孔構造を持つ陽極酸化被膜の形成が、比較的容易に実現可能となった。また、衝撃波管を用いて発生させた衝撃波の通過によって生じるステップ型の急激な圧力上昇を用いた感圧塗料の応答性評価手法についても併せて確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災の影響で研究開始時期が数か月遅れたため、超高速応答型感圧塗料のバインダ候補としての様々な多孔質材の開発および選定が十分に行えなかった。しかしながら、現状で超高速応答型感圧塗料の候補として最も有力である陽極酸化被膜型感圧塗料について、平成23年度後半にその被膜形成法を確立し、被膜条件をコントロール可能となったため、現在はより高い時間応答性を持つ被膜を作成することが可能となっている。技術確立が遅れたために平成23年度中には十分な数のサンプル作成およびそれらに対する応答性試験を行うことができなかったが、そのような中でも、得られた中で最も高い時間応答性を有するサンプルの応答時間は過去に最も早い応答時間として報告されている1.8マイクロセカンドに肉薄しており、平成24年度の早い時期に1マイクロセカンドより速い時間応答性を有する超高速応答型感圧塗料技術は確立できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は陽極酸化被膜を用いた感圧塗料で1マイクロセカンドより速い時間応答性を実現し、その被膜形成条件を確立する。その後、時間応答性の向上と並行して、衝撃波反射現象やブラスト波の伝播に代表される高速非定常現象に対する感圧塗料の適用を行い、超高速応答型感圧塗料を用いた高速非定常現象の解明に向けた基礎実験を行う。また、定量可視化手法の一種である点回折干渉法やその他の光学可視化手法を用いて同様の現象を別に可視化計測し、超高速応答型感圧塗料を用いた計測結果と組み合わせることにより、流体現象をより高次に把握可能な複合計測手法の確立を目指す。あわせて、時間遅れの影響を含む画像群から非定常流れ場を理論的に再構成する画像データ処理アルゴリズムの開発も進める。最終的にはこれらの結果を取りまとめ、国内外の学会で発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、当初超高速応答型感圧塗料の感圧色素として用いる予定だった色素の変更により実験光学系に変更が必要となったことで生じたものであり、次年度に実施する感圧塗料サンプルに対する応答性試験および高速非定常現象への超高速応答型感圧塗料適用実験に必要な経費として、平成24年度請求額とあわせて使用する予定である。研究費のうち、約120万円を感圧塗料の励起用光源の購入をはじめとした実験光学系の構築費用に充て、実証模型の作成(材料費および製作費)に約30万円、点回折干渉法を中心とした光学的可視化計測のための撮影用光学系に用いる光学素子購入に約30万円充てる予定である。また、残り予算は研究発表のための旅費や論文投稿料、および消耗品(薬品等)の購入に充てる予定である。
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