2011 Fiscal Year Research-status Report
高精度の補償光学技術に基づくリモートセンシングにおける合成開口望遠鏡の研究
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23760766
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮村 典秀 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (50524097)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 宇宙利用・探査 / 補償光学 / 機械学習 / デフォーマブルミラー |
Research Abstract |
今年度は、観測画像から光の波面収差を推定するための機械学習手法の研究と、波面収差を補正するためのデフォーマブルミラーの制御手法の研究とを実施した。観測画像に基づく波面収差推定のための機械学習手法の研究では、具体的に、次の内容を実施した。研究の対象とする合成開口望遠鏡システムについて、波長依存性と視野依存性を無視したフーリエ光学理論を拡張した数学モデルを構築した。波面センサで波面を直接測定するかわりに、Phase diversity法に基づく画像ベースの収差推定手法を導入し、デフォーマブルミラーを想定した波面制御によって、光学系に既知の収差をアプリオリ情報として与えた画像を複数枚取得することにより、画像から収差を推定する問題を適切(well-posed)な逆問題に帰着させる手法を考案した。このとき、観測画像には波面収差のほかに観測対象の影響が含まれる。空間周波数領域で複数の画像を用いて処理することにより、観測対象によらないロバストな収差情報の抽出手法を研究した。デフォーマブルミラーを用いた波面制御技術は、本研究課題の基礎となるものであり、具体的に、次の内容を実施した。高速で画像の推定と波面制御をおこなうために、デフォーマブルミラーの特性を高い精度でモデル化した。このとき、光学収差に一般的な基底関数を用いる方法、アクチュエータごとの感度関数を用いる手法を検討した。以上の成果を元に、汎用的な数値シミュレータを構築し、機械学習手法に用いた画像ベースの収差推定手法と、デフォーマブルミラーの制御手法との妥当性を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、今年度に観測画像に基づく波面収差推定のための機械学習手法の研究と、デフォーマブルミラーを用いた補面制御技術の研究を実施することを挙げた。まず、前者の研究テーマに関しては、ほぼ計画通りに、機械学習手法を確立し、数値シミュレータの検証までを実施した。その過程で、学習時間の短縮と、観測画像に対するロバスト性の確保のために学習手法の改善の余地があることが明らかになり、引き続き改良を行っている。後者の研究テーマに関しては、デフォーマブルミラーのモデル化、制御手法の研究は、ほぼ計画通りに進んでいる。研究費の減額により、当初計画していたデフォーマブルミラーが購入できなかったが、その後、より低コストのデフォーマブルミラーが市場に出てきたため、平成24年度の購入を検討している。デフォーマブルミラーの動作原理は共通のため、今年度のモデル化と制御手法の研究はそのまま他のデフォーマブルミラーにも利用できるため、この変更が全体のスケジュールに与える影響は小さい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究の大枠は当初の研究通り、合成開口望遠鏡システムの構築と補償光学技術を導入した合成開口望遠鏡システム実験を実施する。前者に関しては、システムを簡略化し、コヒーレント光と干渉観測を利用するなどして、主鏡位置での光波の直接測定を利用し、測定データをデジタル処理で合成することにより、光学系による合成に伴うシステムの複雑化を避け、波面推定と補正のみを評価する実験系を構築する。後者に関しては、研究室に既存の浜松ホトニクス社製液晶空間光変調器(Liquid Crystal on Silicon-Spatial Light Modulator、LCOS-SLM)を用いて収差を発生させる。LCOS-SLMを利用することで真値がわかっている波面収差をデフォーマブルミラーを用いた補償光学系によって、推定し制御することによって、推定・制御精度の評価を行う。LCOS-SLMの最大約60Hzの制御周期を利用して、補償光学系の応答速度を評価する。デフォーマブルミラーは回折を抑えるために連続な波面を形成する。これによって、望遠鏡ごとの不連続な収差を補正する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、デフォーマブルミラーの購入を計画していたが、交付金額の減額により、当初計画していたデフォーマブルミラーを購入できなかった。このことが次年度使用額が発生した主要因である。ただし、現在では、交付金額でも購入が可能なデフォーマブルミラーが市場に出てきているため、平成24年度に購入するか、あるいは何らかの代替手段の利用して、計画通りに研究を進める見込みである。また、デフォーマブルミラー以外の光学部品については、当初の計画に沿って研究費を使用する計画である。
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