2011 Fiscal Year Research-status Report
高周波放電式マイクロイオン推進機の放電特性およびイオンビーム引き出し機構の解明
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23760769
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鷹尾 祥典 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80552661)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | プラズマ / 推進機 / 高周波 / マイクロ / 人工衛星 / モデリング / イオンエンジン |
Research Abstract |
超小型人工衛星を機動的に運用して有用性を高めるために不可欠な超小型推進機(マイクロスラスタ)に関する研究開発が盛んである。しかし、そのマイクロスラスタの物理現象を深く理解し理論体系を確立しようとするものはほとんどない。本研究は高周波放電式マイクロイオン推進機を対象として実機を作成し、実験結果を粒子モデルに基づく詳細な数値解析結果と定量的に比較を行うことで、その物理現象を解明しマイクロ推進機の学術的基盤の底上げを目指す。 本年度は誘導結合型プラズマ源の放電特性解析を行うため、これまでに構築していた荷電粒子(イオン・電子双方)のみを粒子として扱うPIC-MCC (Particle-in-Cell plus Monte Carlo collisions) 法の改良を行った。具体的に、(i)プラズマと壁面との相互作用の解析を行うため静電ポテンシャル計算を誘電体窓領域まで拡張、(ii)それとともに誘電体窓壁面上での表面電荷蓄積を考慮した静電場計算の実装、(iii)誘導電場を生成するコイルにかかる電位差を静電ポテンシャル計算に反映、(iv)プラズマ源と高周波電力のカップリングをより詳細に調べるための外部回路方程式の取り込みを行った。これらの結果から、周方向の誘導電場を考慮するだけでは分からない容量結合成分の影響を把握することが可能になった。また、周波数依存性を調べたところ、同じ電力において低周波側程プラズマ密度が上昇し、かつ、均一な密度分布になる望ましい結果になることが分かった。 さらに、上記モデルとの比較を行うため半径5 mm、長さ10 mmの円筒型誘導結合プラズマ源(マッチング回路無し)を作成した。予備的な実験において、120 MHzにおいてArプラズマの放電・維持を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は日本学術振興会の組織的な若手研究者等海外派遣プログラムを利用して10月から3月までの半年間ドイツのギーセン大学に滞在しており、その間、実験に関する研究は止まっていたため。なお、モデリングに関する部分は滞在中もほぼ滞りなく進んでいる。また、ギーセン大学滞在中に学んだ技術は今後の研究を加速できるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究においては、(i)プラズマ源にマッチング回路を挿入し、プラズマ源へ投入する高周波電力(電圧・電流)、周波数、放電室圧力(推進剤流量)を変化させ、その変化に対するプラズマ密度(電子密度)、電子温度の依存性を調べる。そして、(ii)これらの結果を本年度に作成したモデルと比較検討しプラズマ源の放電特性解析を行う。続いて、(iii)イオンビーム引き出し機構を作成し、加速電極に1 kV程度の電位差をかけてイオンビーム引き出し実験を行う。この時、モデルとの比較し易さから、ビーム引き出しのための孔は中心に1つだけを作成する。引き出された電流分布をファラデーカップにより測定し推進性能を算出する。ならびに、(iv)本年度に作成したモデルをイオンビーム引き出しにも対応させるため、加速電極下流領域まで計算範囲を拡張する。計算から得られた推進性能、ビーム電流、ビーム速度空間分布等を上記の実験結果と定量的に比較する。特に、中性粒子の流れが推進性能に与える影響や、イオンビームの軌道プロファイルに注目して解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は半年間ギーセン大学に滞在していたため、また、別途申請していた海外渡航助成金を利用して国際会議へ参加したため次年度使用額が生じることになった。次年度の研究費は、プラズマ源のマッチング回路を挿入する電気電子部品、イオンビーム引き出し機構を作成するための機械部品、これらを真空チャンバー内に挿入するための真空部品、プラズマ診断をするための光学部品、イオン推進機を動かすための推進剤ガス等の消耗品、そして、研究成果を発表するための国内外の旅費、および、論文投稿料に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)