2011 Fiscal Year Research-status Report
新しい放電形態を用いた高出力プラズマアクチュエータの開発
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23760771
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
松野 隆 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90432608)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 航空宇宙流体力学 / 環境適合技術 |
Research Abstract |
本研究ではプラズマを用いた流体制御アクチュエータによる航空機・輸送機器の空力抵抗の劇的な削減による省燃費化をめざしている。このうち、プラズマアクチュエータに新しい放電機構を適用し、性能向上を実証し、その性能解析を行うことを具体的な目的とし、研究・開発を行っている。 平成23年度は、計画通り新規放電機構によるプラズマアクチュエータの流体制御特性解析に注力し研究・開発を行った。本年度は新規放電機構としてSDBDプラズマアクチュエータに電極を付加した三電極スライディング放電型のプラズマアクチュエータについて、種々の形状・駆動条件においてジェット推力計測を行い、強い噴流を生成するプラズマアクチュエータの構成を探索した。この結果、典型的なポリイミド使用SDBDアクチュエータの推力(0.6=1.0mN/m) に対し31倍の推力(19mN/m)を生成することに成功した。この構成に関して推力偏向特性やエネルギ効率について実験により調査し、三電極プラズマアクチュエータの基本性能を評価した。あわせて、高速度シュリーレン撮影により噴流の高時間解像度可視化を行い噴流偏向と放電状況の関係について調べた。 一方で放電・電場のモデルを用いたアクチュエータ構成最適化に関しては、電磁場の数値解析モデル・プラズマアクチュエータの放電のモデル調査・開発を行っている中途であり、本年度はまだアウトプットが得られていない。 本年度得られた研究成果の意義・重要性は、上記の通り研究目標を直接的に達成することができただけではなく、噴流制御による能動流体制御に必要となる駆動特性を明らかにし、またモデル化を行う際のベンチマークとなる結果を獲得できた点が重要であると考えている。実用化に必要な流体制御力を生成可能なアクチュエータ素子を開発することためのベースとなる成果を本年度研究により得られたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、全体の目的である輸送機器の実運用条件までのプラズマアクチュエータによる流体制御可能領域の拡張に関して、研究期間中の最低限の目標を「プラズマアクチュエータに新しい放電機構を適用し、性能向上(既存構成に対し10倍程度)を実証し、その性能解析を行う」こととした。また「DBDおよび新しい放電機構についての、プラズマアクチュエータの電場・推力の最適設計手法の提案」を最大目標に設定している。平成23年度の研究により、上記の最低限の目標はすでに達成したと考えている。 アクチュエータの性能向上については、三電極型プラズマアクチュエータによって典型的なポリイミド使用SDBDアクチュエータの推力(0.6=1.0mN/m)に対し31倍の推力(19mN/m)を生成することに成功した。また、新型プラズマアクチュエータの生成噴流の偏向と放電状況の関係調査やエネルギ効率について評価を行い、これらよりさらなる高性能化を行うにあたっての知見を得ることができた。 一方で、放電・電場のモデルを用いたアクチュエータ構成最適化については、現在モデル構築が進行中であり、平成24年度にこれらを行う予定である。このため、上記の最大の目標に関してはまだ十分な達成度ではないと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、既提出の研究計画に沿い、まず放電・電場のモデルを用いたアクチュエータ構成最適化に注力する。現在電磁場の数値解析モデル・プラズマアクチュエータの放電のモデル調査・開発を行っているが、これを進めスライディング放電等の手法を適用できるよう改良を行う。その後、アクチュエータの最適設計を行う。まず、前年度に既取得の実験結果によりモデルのバリデーションを行い、その有効性を検証する。その後、モデルに対して形状・駆動方法を変数とした多変数の最適化を行い、新しい放電機構に対して最適なプラズマアクチュエータ構成を決定する。最適化部分は多目的GAを用いる予定であり、一部は首都大学東京の金崎准教授らとの共同研究を計画している。 最後に、新規放電機構によるプラズマアクチュエータの流体制御特性解析を行う計画である。上記により設計されたプラズマアクチュエータ素子の基本性能を評価した後、大スケール風洞試験に適用しその有効性を検証する。 風洞試験には鳥取大学の低速風洞を実施し、駆動時の流体抵抗の低減効果を評価することによって、大スケール・比較的高速(~40m/s)流れに対するアクチュエータの性能を評価し、今後の発展可能性を検証する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度計画で導入を予定していた風洞試験用機械部品について、機械加工のスケジュール上年度内導入が行えず、研究費使用計画の調整の必要が生じた。このため実験計画の順序を調整し、平成24年度導入予定であったプラズマアクチュエータ部材等を先行して導入した。この差額部分で少額の研究費が翌年度持ち越しとなったが、本来導入する計画があったものを先行して発注したため、全体としての使用計画の変更は必要ない。 平成24年度は研究計画通り初年度に整備した設備をベースに研究を行う。消耗品の消費ペースはある程度緩和されると予測している。計画提出時からの追加事項として、電源・制御用PCのハードディスクに不具合が生じており、これを修理するための経費が必要となる可能性がある。
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