2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23760782
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
千賀 英敬 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60432522)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 渦励振 / 長大弾性管 / PIV / 渦励振軽減装置 |
Research Abstract |
海洋開発の分野において,円柱形状の構造物が数多く利用されている.径の大きなものでは海底掘削に用いられる管や浮体式構造物の支柱などがあげられる.これらの円形断面構造物には潮流,波,また連携する構造物からの反力など,様々な外力が作用する.それらの中でも,構造物から剥離する渦により生じる揚力は渦励振(Vortex Induced Vibration, VIV)と呼ばれる振動現象を引き起こす.渦励振は長大弾性管の疲労破壊の原因となり得る. 円形断面構造物に生じる抗力や発生する渦励振を軽減させるため,スプリッタ板や翼形状等の付加物が利用されてきた.しかし,使用環境によっては意図した軽減効果が得られないことや,逆に渦励振を増大させることもある. H23年度は,付加物が円形断面構造物に及ぼす影響の実験を小型回流水槽にて行った.水槽内に剛体円柱の両端を固定またはコイルばねを用いて支持し,一様流を与えた.円柱の運動計測と同時に,可視化用レーザーを照射して円柱後方の2次元断面内を流れる粒子を可視化し,解析を行い,以下の結論を得た.スプリッタ板や翼型等の付加物を単純に取り付けると,場合によっては,共振の起きる振動周波数でなくても渦励振の振動振幅を増大させることを確認した.付加物を取り付けた場合の渦の流出周波数は,取り付ける付加物の断面の長さに関係している.付加物の断面長さを調整することにより,渦励振による円柱の振動数を意図的に変化させることが可能である.カルマン渦の流れ方向の間隔を変化させることが可能な付加物は,渦励振を軽減可能である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長大弾性管の渦励振を軽減させるための付加物は,渦励振の軽減性能だけではなく,取り付けの簡便さや実作業の妨げにならない形状であることも考慮されるべきである.数値計算を用いて,付加物の形状を容易に変更し,渦励振軽減性能の検証が可能となれば,高効率な付加物の形状設計が容易となる.しかしながら,付加物を取り付けることによって円形断面構造物の挙動や周りの流場がどのように変化するかを実験しておくことも重要であると考え,H23年度は実験に重点を置き,研究を進めた.円柱の運動は,円柱の断面にマーカーを貼り,円柱の運動を計測した.その際,円柱の運動変位だけでなく,回転も計測出来るように,マーカーは複数点に貼った.また本研究の予算で購入した可視化用レーザーを照射して円柱後方の2次元断面内を流れる粒子を可視化した.実験に使用した円柱は可視化用レーザーを通しやすいよう,透明なアクリル製である.付加物は,テフロンリングを介して円柱に取り付けた.円柱の運動と周囲の流場は,1台のハイスピードCCDカメラにより撮影した.したがって,解析において運動と流場の間に時間のずれは生じない.これらの実験方法により,渦の流出周波数に影響を与える付加物の回転を詳しく解析することができた.流向が時間に関して一定である場合に有効な渦励振を軽減する付加物の形状を実験的に求めた.また付加物と円柱間の摩擦が,渦励振の軽減に影響するという重要な結果を得た.また,長大弾性管を用いた掘削を行う地球深部探査船「ちきゅう」を訪船し,実務に携わる研究者に話を伺うことができたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
H23年度は,付加物が渦励振に与える影響を実験的に解析した.その結果、流向が時間に関して一定である場合に有効な渦励振を軽減する付加物の形状を実験的に求めた.また付加物と円柱間の摩擦が,渦励振の軽減に影響するという結論を得た.今後,これらの結論を検証するための数値計算手法を確立していく.特に付加物と円柱間の摩擦については,実験にて任意に摩擦を調整することが困難である.また渦励振を軽減するための付加物は,渦励振の軽減性能だけではなく,取り付けの簡便さや実作業の妨げにならない形状であることも考慮されるべきである.従って,付加物の形状も任意に変更可能であり,渦励振の軽減性能を精度よく推定可能な数値計算手法の確立は重要である.数値計算によって検証した付加物形状を実際に制作し,追加実験を行う予定である.それらの研究成果を学会にて発表し,また論文集に投稿する予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
数値計算用のPCと計算速度を向上させるためのメモリを購入する予定である.追加で実施する実験に使用するための消耗品を購入予定である.また情報収集を行うために,学会に参加するための旅費として使用する.その他,H23年度の研究成果を日本船舶海洋工学会論文集(査読有)に投稿した結果,H24年度の論文集に掲載可となったため,その掲載費用を支払う.H23年度のPIVレーザーのように、50万円を超える物品を購入する予定はない.
|