2011 Fiscal Year Research-status Report
舶用ディーゼル機関における廃食用油利用の可能性について
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23760786
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Research Institution | Yuge National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
秋葉 貞洋 弓削商船高等専門学校, 商船学科, 准教授 (60332079)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 熱工学 / 舶用機関・燃料 / 代替燃料 / 排気改善 |
Research Abstract |
廃食用油には高沸点成分が多く含まれるためディーゼル機関で使用した場合には燃焼室内に多くのカーボンデポジット(以降,デポと記述)が生成すると考えられる.そこで燃焼室壁面に見立てた蒸発皿(以降,皿と記述)に食用油と食用油に水を添加したエマルジョン燃料を滴下し,皿温度を変化させた場合の蒸発時間や皿に堆積したデポの質量を計測した.実験には未使用のなたね油(以降,なたね)となたねに水を質量分率で15%混合した燃料(以降15%エマと記述)を使用した.15%エマは水に対して10%の乳化剤(HLB値:12)を混合し,ホモミキサで10分間かくはんして作成した. なたねは400℃を超えても蒸発に数十秒かかり.また15%エマはなたねに比べ蒸発時間は短くなる.これは水のミクロ爆発により四散するためであると考えられるが,A重油などに比べ非常に蒸発しにくいことがわかった. 次に,皿に燃料を3時間滴下し,皿の上に堆積したデポの質量を計測した.滴下間隔をなたねで2分,15%エマで30秒とした.これは滴が皿から放射される熱で加熱されると水と油が分離,蒸発してしまい,水のミクロ爆発の効果が期待できないためである.なたねは340℃において滴下質量の73%がデポとして堆積,温度が高くなるにつれデポは減少した.15%エマはデポの堆積する割合がなたねに比べ少なく,340℃では滴下したなたね質量の21%が堆積した.なたねでは皿中央に蒸発しきれない油がデポとなり堆積するが,15%エマでは滴が水のミクロ爆発により広範囲に四散した.その結果,一部は皿を飛び出すことになるが,皿全面に滴が広がったことで蒸発が促進したためだと考えられる.以上の結果より食用油はA重油などの従来燃料より燃焼室の汚損を引き起こす可能性があるが,エマルジョン化することでその汚損を抑えることができる可能性があることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
計画では高温蒸発皿を用いたエマルジョン燃料の性状が蒸発特性やカーボンデポジットの生成過程に与える影響についての調査と小型直噴ディーゼル機関を用いた燃焼,排気性能測定実験の準備および年度内の実験開始を計画していた,実施したのは15%エマルジョン燃料となたね油の堆積物の生成特性の傾向の調査とシリンダヘッドの加工,センサ選定,発注である.計画の遅れの原因は安定したエマルジョンを作成する乳化剤,配合に関する項目の選定に時間がかかったこと,燃焼圧を計測するための機器の選定と加工の準備に時間がかかったことである.まず,安定したエマルジョンの作成についてであるが,使用している乳化剤はもともと食用油への使用を考慮して選定したものであった.しかし過去の経験から得られた最適のHLB値(薬剤の水と油への親和性を示す値)や配合比で作成しても安定した油中水滴型のエマルジョンが作成できなかった.そこでメーカや界面活性剤を使用している教員への問い合わせ,また他の研究者の使用実績がある薬剤を入手し,乳化剤とHLB値や配合比を広範囲で変化させて安定性の検証を行ったため非常に時間がかかった.また,センサの選定についてはディーゼル機関が小型であるため圧力センサの取り付けが困難であるのは予想していたが,取付け場所がほとんどなく,実機のシリンダヘッドを分割し検証する必要が生じた.そのため加工業者やメーカとやり取りを繰り返し,センサや取付け場所,取付方法の決定に時間がかかった.またセンサ発注の段になって予定品の納入が24年6月になることがわかり,準備に大きな遅れが生じた.特に安定したエマルジョンの作成は研究の中心であり,その点について見通しが甘かっこと,またエマルジョンの作成に手間を取られていることに気を取られすぎ,かつ蒸発皿を用いた実験にかかる時間に対する考慮が欠けており計画を効率よく進めることができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
1,蒸発皿を用いた燃料性状(含水率)が蒸発特性やカーボンデポジットの生成過程に与える影響についての調査において平成23年度に実施できなかった含水率を変化させた場合,廃食用油をベース油にした場合などの実験を行う.2,遅れている小型高速直噴ディーゼル機関における燃焼,排気性能測定実験の準備をすみやかに進め,実験に移る.当初計画していた排ガス中の濃度測定成分(未燃炭化物,NOX,CO,CO2,煙濃度)のうち,平成23年度に故障したNOXメータは修理不能であるため,NOX濃度の計測は行わない.また,平成23年度に得られた結果より食用油を機関で用いると燃焼室内へのカーボンデポジットの堆積,排ガス中の未燃物濃度の増大が予想される.そのため排気弁や,燃焼室内,噴射弁へのカーボンデポジットの堆積状況の調査,排ガスの濃度測定結果と燃焼圧力解析により得られた燃焼特性値との比較に重点を置く.ただし,排ガス中の濃度測定成分のうち煙濃度は,スモークメータが不調であり,また平成19年度から国土交通省のディーゼル車の検査においてスモークメータの煙濃度測定からオパシメータによるPM濃度測定に切り替えられたことから本研究課題においてもオパシメータを導入し,PM測定に切り替える.3,平成25年度に舶用中速ディーゼル機関の実験ができるよう準備を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度直接経費1,800,000円のうち納品が平成23年度に間に合わず平成24年度となる筒内圧力センサ一式36,6450円とシリンダヘッド加工一式260,820円は納品があり次第支払われることになる.残金1,172,730円と平成24年度直接経費600,000円の合計1772,730円のうち設備備品費に860,000円(燃焼圧力解析パッケージ(ディーゼル用),オパシメータ)を予定,消耗品代(食用油,乳化剤,ディーゼル機関消耗品,中型舶用機関燃料系統改造費,ガス分析器消耗品代等)に712,730円,旅費におよび論文投稿費と別刷り,印刷費に200,000円を予定している.
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