2012 Fiscal Year Research-status Report
舶用ディーゼル機関における廃食用油利用の可能性について
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23760786
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Research Institution | Yuge National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
秋葉 貞洋 弓削商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60332079)
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Keywords | 熱工学 / 舶用機関・燃料 / 代替燃料 / 排気改善 |
Research Abstract |
平成23年度は食用油(なたね油)(以降,食油)に質量分率で15%の水を混合したエマルジョン(以降,エマ)燃料を高温蒸発皿(以降,皿)に滴下し,蒸発時間や皿に堆積したカーボンデポジット(以降,デポ)生成率の計測を行った.平成24年度は廃食用油(以降,廃油)の皿温度を変化させた場合のデポ生成率および同じ皿温度における食油と廃油,食油から作成したBio Diesel Fuel(BDF)と従来燃料であるA重油のデポ生成率の比較を行い,廃油が食油や従来燃料と比較してどの様なデポ生成傾向を示すか調べた.廃油のデポ生成率は340℃で約70%,380℃で約60%となった.食油では340℃で約75%,380℃で約40%であるため,380℃では廃油のデポ生成率が高いものの,同じような生成傾向を示すことが分かった.この事から廃油エマ燃料は食油エマ燃料と同程度のデポ削減効果が得られると考えられる.380℃にけるBDFとA重油のデポ生成率は約0.5%と約0.3%となり,質量割合で15%食油エマ燃料のデポ生成率約25%よりもかなり小さい値となった.この事から廃油をエマ化することで廃油をそのまま使用するよりも燃焼室の汚損を防ぐことができる可能性があるが,従来燃料やBDFに比べると燃焼室や排気弁などに多くのデポが堆積し,燃焼を阻害したり機関や潤滑油を汚損する可能性が高いことが分かった.また,エマ燃料を作成するにあたり乳化剤を水の質量に対して10%添加している.乳化剤は大変粘度が高く,これがデポ生成率へ影響している可能性がある.そのため皿温度300℃において乳化剤と水をエマ燃料作成時と同じ条件で混合したものを滴下し,デポ生成率を調べた.その結果,滴下質量の約4%がデポ化していることから,15%エマ燃料の場合,乳化剤由来のデポ生成率は滴下質量の約0.7%となるため,乳化剤の影響は無視していいことが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成24年度は23年度に実施できなかった蒸発皿実験の含水率を変化させた場合や廃食油をベースにした場合などの実験および遅れている高速小型直噴ディーゼル機関(以下,小型機関)における燃焼,排気性能試験の準備を進め,実験へ速やかに移ること,舶用中速ディーゼル機関(以下,中型機関)の実験準備を目標としてきたが,実際に実行できたのは皿温度を変化させた場合のデポ生成率の計測,皿温度が380℃における廃油と食油,BDF,A重油のデポ生成率の比較,乳化剤のデポ生成率への影響と小型機関の実験準備(オパシメータ調達含む)である. まず,蒸発皿実験であるが,平成23年度と同じく,皿の実験は1回に1日を要するためなかなか進まなかった.また,夏に溶剤(ジクロロメタン)の取り扱いについて高専機構本部からの問い合わせがあり,今後の使用について見直す必要が生じる可能性があったため実験を一時中断した. 小型,中型機関の実験準備であるが,小型機関は清掃が終了すれば実験に移行が可能な状態である.しかし,中型機関は24年度の9~10月頃に噴射系,水動力計に相次いで不具合が生じた.この中速機関は商船学科4年生機関コースの実験実習で使用している設備で早急に対応する必要があり,この対応にかなりの労力と時間を費やした.そのため小型・中型機関の実験準備に大きな遅れが生じた. 最後に,急な授業担当変更や,申請していた設備の更新の対応などが1月以降に集中した.私の所属している商船学科は9月に席上課程の修了,実習生の卒業があり,授業等の負担は前期に集中しているので,研究を進めるにあたり後期に重点をおいていた.そのため前述の計画の遅延がさらに酷くなった.
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Strategy for Future Research Activity |
1,遅れている小型機関の燃焼,排気性能測定実験を行う.平成24年度当初の予定では23年度に故障した窒素酸化物(NOX)濃度計測は行わず,ボッシュ式煙濃度計をオパシメータに置き換え,煙濃度ではなくPM濃度を計測,また炭化水素(HC),一酸化炭素(CO),二酸化炭素(CO2),酸素(O2)濃度の計測を行う予定であった.しかし,平成25年11月までに5成分(全炭化水素(THC),NOX,CO,CO2,O2)排ガス測定装置が導入される予定である.特にTHCの計測は加熱型水素炎イオン化法を採用しているため,当初予定していた装置(加熱型の計測器でないため)で計測できない高沸点成分のHCを計測できるようになる.そのため排ガス測定装置が導入されるまでは筒内圧力解析を中心とした実験を行い,導入後は筒内圧力解析の結果を基に排気性能の計測を行い,燃焼特性と排気性能の関係を明らかにすることを目指す.また,小型機関の燃焼室内や排気弁まわりのデポの堆積状態を調査を行う. 2,中型機関の実験が再開できるよう準備を行う.平成24年度に発生した中型機関の不具合のうち,水動力計に関する問題はいまだ解決できておらず,現在は研究に使用できない状態にある.この問題は水動力計が設置後30年以上経過しているためケース内部が錆等により汚れ,動作がスムーで無くなった事が原因と推測される.ただ,この装置は大型であるため移動が困難であり,精密な機械であるため専門業者に修理を頼まなくてはならず,修理を行うにも費用が非常に高額となる.本校の業務にも必要不可欠な装置のため修理等の予算措置がなされるよう働きかけているところであり,今後もそれを続けていく. 3,蒸発皿実験を行う.あくまで補助的なものとして1の実験で特異な状況が確認できた場合,その状況を確認するために行うものとする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23および24年度の直接経費の合計2,400,000円のうち24年度に納入された筒内圧力センサ,燃焼圧解析パッケージ,オパシメータ等で1,195,320円を使用し,残金は1,204,680円となる.残金に平成25年度の直接経費700,000円を加えると合計1,904,680円となる.このうち25年度に導入されるガス分析器装置のガス等消耗品に400,000円を予定,筒内圧力センサ用チャージアンプ・燃料流量計(設備備品費)に750,000円,燃料費および乳化剤,機関の部品,消耗品,改造等に必要な資材等に554,680円,旅費および論文投稿費と別刷り,印刷費に200,000円を予定している.
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