2014 Fiscal Year Research-status Report
舶用ディーゼル機関における廃食用油利用の可能性について
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23760786
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Research Institution | Yuge National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
秋葉 貞洋 弓削商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60332079)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 熱工学 / 舶用機関・燃料 / 代替燃料 / 排気改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は小型機関でA重油とA重油に水を質量分率で10%と15%混合したエマルジョン燃料(以降エマ)を用いて機関性能と排ガス濃度の測定を行い,燃焼圧力解析結果と比較した.実験条件は回転数を1600,2000,2400rpmとし,レシオ荷重を3㎏とした. 燃料消費率はA重油に対しエマではすべての回転数において同程度の値となった.全炭化水素はエマを使用すると増加し,含水率が増えると排出濃度は増加した.しかし,粒子状物質(PM)は1600rpmでエマの方が高くなるが,2000rpmでエマとA重油は同程度の濃度となり,2400rpmではA重油に比べエマのPM濃度は低く抑えられている.また1600と2400rpmでは含水率が高い方がPM濃度は高くなる.この結果からエマを用いると燃料の未燃分が増えるが,運転条件によればPMの増加を抑えることができる可能性があることが分かった. 窒素酸化物(NOX)は1600rpmの10%と15%エマ,2000rpmの10%エマでA重油より高くなり,また1600と2000rpmでは含水率が高くなるとNOX濃度が低くなるが,2400rpmでは10%に比べ15%エマの濃度が高くなった.筒内圧は2400rpmの10%を除きエマはA重油より最高圧が高くなり,回転数が高くなると着火遅れ期間が長くなる.この結果は水の運動量が燃焼状態を改善する効果を示すものだと考えられる.2400rpmで15%に対し10%エマのNOX濃度が低下するのは筒内最高温度(以降最高温度)が低く1500℃以上の高温期間(以降高温期間)が短くなるためである.1600rpmでエマのNOX濃度が増加するのは水の運動量の効果によりA重油より最高温度が高く,高温期間が長くなるため,またエマの含水率が増えるとNOX濃度が低下するのは含水率が増えることで最高温度と高温期間が抑えられるためだと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成26年度は小型機関の機関,排気性能測定試験,燃焼圧力解析を中心に行った.しかし,26年度前半は実験を行いつつ専攻科生の装置取扱の習熟,安定した計測を行うための実験手順の確立,実験を行うに当たり判明した不具合への対応,25年度に導入された5成分排ガス測定装置の除湿能力に上限があるため含水率の低い条件から実験を始めたことに加えて,6月に祖母が亡くなったため1週間の忌引きを取得したこと,9月に5商船高専で実施ているプログラム参加のため17日間の出張に出ていたことなどにより計画が遅れていった.後半は遅れていた実験を集中的に行っていたが,専攻科2年生の研究成果レポート作成の指導に思いのほか時間がとられ計画の遅れを取り戻すことができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
遅れている小型機関の機関,排気性能測定試験を行う.26年度は排ガス測定装置の除湿能力に制限があるため低い含水率での実験を行った.その結果,水の潜熱を利用したNOX濃度低減効果が十分に確認できなかったので,含水率を高めた実験を行う.またその結果を基に廃食用油をエマルジョン化した場合にも同等の効果があるか,また別の問題点が生じないかを調べることを中心に進め,舶用ディーゼル機関における廃食用油の利用の可能性について調査する.
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Causes of Carryover |
これまで実験装置の故障などの事象が重なったため,計画が大幅に遅れている,そのため廃食用油をエマルジョン化した場合のディーゼル機関の燃焼,排気特性に与える影響に関する知見をまだ得ることができていない.そのため期間を延長して廃食用油を用いた性能試験を行い,舶用機関における廃食用油利用の可能性についての知見を得る.平成27年3月31日段階で研究遂行に必要な機器,物品類の大部分を購入したが,平成26年度中に購入できなかった排ガス測定装置で使用するガスボンベと報告書作成の物品費等の費用が未使用額として生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度における廃食用油を用いた小型ディーゼル機関の燃焼,排気性能試験を遂行するに当たり必要な機器及び,物品,消耗品等の大部分を平成26年度中に手配しており,これを用いて研究課題を遂行する予定である.しかし平成26年度中に購入できなかった排ガス測定装置で使用するガスボンベの購入費と報告書作成の物品費として78,546円を平成27年度に使用する予定である.
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