2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノレベル表面構造解析による照射下微小き裂発生機構解明と予兆検知・対策技術の開発
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23760803
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野上 修平 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00431528)
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Keywords | 低放射化フェライト鋼 / 疲労 / 照射損傷 / 微小き裂発生 / 表面構造 |
Research Abstract |
平成24年度は、低放射化フェライト鋼F82Hの非照射材およびはじき出し損傷を導入したイオン照射材について微小き裂発生挙動を明らかにするため、疲労試験とその後の分析を系統的に実施した。FE-SEMによる分析により、非照射材では、疲労寿命の約20%において微小き裂の発生が確認された。また、EBSD解析により、発生サイトは旧オーステナイト粒界、パケット境界、ブロック境界、ブロック内部の下部構造の4つに区分され、発生割合としては結晶粒内の各部位が90%以上を占めることが明らかになった。一方、イオン照射材では、非照射材においてき裂発生までに要した繰返し数の約50%の繰返し数において微小き裂の発生が確認された。しかし、き裂発生サイトは非照射材と変わりはなく、その割合も概ね非照射材と同等であった。これより、低放射化フェライト鋼では、はじき出し損傷により微小疲労き裂の発生サイトやその割合は変化しないが、き裂の発生は促進されることが明らかになった。 これらの要因としては、はじき出し損傷により照射硬化が生じ、その結果として結晶粒内において不均一変形が発現したことが主として考えられた。よって、研究代表者の先行研究におけるオーステナイトステンレス鋼とは異なり、表面構造変化が主たる疲労き裂発生要因ではない可能性があるため、不均一変形挙動を考慮したき裂発生寿命延伸技術の検討が必要であることが示唆された。 これらと並行して、F82H電子ビーム溶接材についても、微小き裂発生挙動を同様に評価した。その結果、溶接部は溶金部、粗粒熱影響部、細粒熱影響部、過熱影響部、母材に区分され、疲労試験下において最もひずみの集中する過熱影響部と細粒熱影響部の境界付近において、疲労き裂の発生が確認された。き裂発生サイトなどの分析の結果、溶接材においても基本的な微小き裂発生の機構は母材と同等であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低放射化フェライト鋼F82Hの非照射材およびはじき出し損傷を導入したイオン照射材、F82Hの電子ビーム溶接材を対象とした微小き裂発生挙動の評価をおおむね完了した。よって、研究としては目標達成に向けおおむね順調に進展していると考えられる。また、これらの結果は、国内外の学会において成果発表し、また一部の成果については論文公表もなされたため、成果の発信の観点でもおおむね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の当初予定としては、平成24年度までにキャラクタリゼーションした微小き裂発生サイトのナノレベル表面構造と内部組織の知見を考慮し、機械研磨と化学研磨による再生研磨条件と寿命延伸率との関係を系統的に調査することとしていた。しかし、平成24年度の研究により、研究代表者の先行研究におけるオーステナイトステンレス鋼とは異なり、表面構造変化が主たる疲労き裂発生要因ではない可能性が示唆された。したがって、平成25年度においては、低放射化フェライト鋼における微小疲労き裂の発生機構をより詳細に調査し、発生寿命の延伸技術の検討とともに、発生した微小き裂の成長の抑制という観点での技術開発についても検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、試験片製作費用が当初予定と一部変更になったことにより生じたものであり、次年度以降に実施する各種試験に必要な経費として、平成25年度請求額とあわせて使用する予定である。
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Research Products
(5 results)