2012 Fiscal Year Research-status Report
析出物/マトリックス界面構造制御による点欠陥消滅促進の機構論的解明
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23760804
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
畠山 賢彦 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (30375109)
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Keywords | 界面 / 照射 / 析出物 / 転位 |
Research Abstract |
析出物/マトリックス界面の点欠陥に対するシンク効果を調べる為に、Cu-Cr-Zr {Cu-0.9Cr-0.14Zr (wt.%)}合金とCu-Cr{Cu-0.9 (wt.%)}合金について超高圧電子顕微鏡によるその場観察を再度実施した。 Cu-Cr-Zrについては873 K, 4 h、 Cu-Crについては873 K, 1 h過時効しCrリッチ析出物を平均直径5 nm以上に粗大化した試料について、室温、373 K, 473 K, 673 Kの温度で 加速電圧1250 kV、照射量2 dpa(損傷速度1 ×10‐3 dpa/s)までの電子線照射その場観察を行った結果、両合金で室温から473 Kで主に格子間型の転位ループが形成された。Cu-Cr合金では、室温から473 Kで主に格子間型の転位ループが形成された。その核生成サイトは析出物/マトリックス界面であり、室温では析出物を挟むような2面で転位ループが形成した。室温および473 Kでは転位ループの一次元運動が観察された。673 Kでは転位線の運動のみが認められた。一方、Cu-Cr-Zr合金では、室温,373 Kで転位ループが主に析出物/マトリックス界面で核生成し、一次元運動を行いつつ、転位ループが格子間原子を吸収して成長した。その組織発達は、主に析出物近傍でみられ、0.1dpa程度の照射の後、転位がタングルし始めるとともに粗大化した転位ループもしくは転位線が格子間原子を吸収し、付近に積層欠陥四面体が高密度で生成された。200℃では積層欠陥四面体は形成されず、転位ループの生成、成長の後、転位線となり長距離の運動を行うのが観察された。 これらの結果から、Cu-Cr,Cu-Cr-Zr合金ともに定性的に析出物/マトリックス界面が強い点欠陥および点欠陥集合体のシンクとして作用することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたCu-Cr-Zr系やCu-Cr系のCr析出物/マトリックス界面については、順調に照射実験を実施し、取得されたデータから界面シンクの機構論的な解明を進めている。 それに加え、オーステナイトステンレス鋼(PNC316)の主要な照射誘起析出物とマトリックス界面の3DAP観察結果が得られている他、Cu合金と同じFCC金属の拡張転位の部分転位と積層欠陥部分およびその周辺の原子分布と偏析について原子マップを初めて取得した金属学会で発表した。 転位組織は構造が正確に同定出来、電子顕微鏡でも容易に観察が可能であるため、これらの照射誘起偏析を調べる手法を開発した意義は界面シンク効果の定量化を進める上で各合金における標準のシンクとして用いることが出来る為大変有用である。 これらの理由により本研究はおおむね順調に進展していると評価出来ると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
超高圧電子顕微鏡観察結果より、定性的なCr析出物/マトリックス界面のシンク効果が明らかになりつつあり、それが強いニュートラルシンクとして作用することが示唆された。 このことは、材料開発への応用において非常に重要な知見であるが、機構論的にこの現象を解明するためには、どのような条件で界面シンクの性質が変化するのかを調べる必要がある。解明の糸口としては、照射温度をより低温にし、空孔の移動度を下げニュートラル シンクを転位バイアスシンクに徐々に変化させた場合、欠陥が先ずどのような領域で形成するかを詳細に調べることである。Cu-Cr合金の場合は、473 K付近から転位ループがごく一部の析出物/マトリックス界面で形成され、それが成長し転位線となり移動した後に 再び同じ場所に転位ループが形成される現象を繰り返すことが分かった。転位ループの運動は、室温では高速であるため、既存のCCDカメラと静止画による写真撮影では運動の記録が難しいため、動画で記録するための環境整備を行い、より微細な転位ループの核生成と、シンクへの移動、消滅過程を統計的に調べることにより、界面構造とシンク効果の解明を進める。 一方、界面構造を変化させた場合のシンク効果の違いを調べることも重要である。Cr析出物の寸法を変化させることで、ミスフィットの大きさや、ミスフィットの大きい領域の割合が変化し、例えば転位ループの生成率が変化することも予測される。従って、過時効の 条件を変えて析出物寸法を系統的に変えた試料や、非整合の析出物を導入した試料(例えば酸化物分散Cu合金)の照射その場観察も実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も継続して九大超高圧電顕室の装置により実験を継続する予定である。そのため、九州大学への出張旅費を4回分程度計上する。そちらで使う動画キャプチャー用の設備の消耗品等を購入する予定である。 また、東北大金研大洗センターで使用する透過電子顕微鏡の試料ホルダーや試料加工装置の整備、それらの消耗品費用に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)