2012 Fiscal Year Research-status Report
トロイダルプラズマにおける閉じ込め改善モード遷移に対する新古典粘性の役割の検証
Project/Area Number |
23760812
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
高橋 裕己 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (00462193)
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Keywords | 新古典イオン粘性 / 電極バイアス / 閉じ込め改善 / トロイダルプラズマ / 大型ヘリカル装置 / Heliotron J |
Research Abstract |
平成24年度は、LHDにおける閉じ込め状態の遷移に要求される、ポロイダルフロー駆動力の磁場リップル構造依存性を取得するために、4種類の磁場配位で生成されたプラズマを対象にして電極バイアス実験を実施した。新古典イオン粘性の絶対値、並びに、ポロイダルフローに対する振る舞いは、プラズマ閉じ込め磁場のリップル構造に大きく依存する。外寄せの磁場配位では実効的ヘリカルリップルは大きくなり、新古典イオン粘性も大きくなることが予測される。LHDでの実験では、新古典イオン粘性の遷移駆動力は、磁気軸外寄せの磁場配位において大きくなることがわかった。この結果は、従来、使用されているShaingのイオン粘性モデルの傾向と定性的に一致するが、定量的な一致は見られない。そこで、イオンのラーマ―半径効果まで考慮に入れた、FORTEC-3Dコードによる粘性の評価を行ったところ、実験と定量的に良く一致する結果が得られた。 Heliotron Jにおける電極バイアス実験では、閉じ込め状態の遷移に必要なバイアス電圧/電流をわずかに下回るマージナルなバイアス条件下において、放電中に自発的な遷移/逆遷移を繰り返す、間欠的な閉じ込め改善現象を発見した。これは、電極バイアスによるマージナルな外部ポロイダル駆動力作用下において、自発的な密度減少により、規格化トルクが増加し、ポロイダル粘性の極大値を上回ったことによって閉じ込め改善モードへの遷移が起こったものと考えられる。また、閉じ込め改善モードへの遷移後は、電子密度の増大により、規格化ポロイダル回転トルクが減少した結果、通常の閉じ込めモードへの逆遷移が発生していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度における当初計画は、(1) 高出力電極バイアス電源の導入、(2) バイアス電極の再検討、(3) LHDにおける新古典イオン粘性の磁場配位依存性・遷移の履歴特性の評価、の三点である。 (1) について、従来の実験では650 V/ 23 Aの電源を使用していたが、LHDプラズマの遷移領域におけるバイアス電圧が420-600 Vであったことから、高閉じ込め領域ではマージナルな条件でのデータ取得にとどまっていた。平成24年度は定格出力1000 V/ 15 Aの、十分な電圧尤度を有する電源を導入し、実験に供することができた。(2) について、従来のバイアス電極では、最外殻磁気面内に電極を挿入した際のプラズマへの摂動が大きいことが問題であったため、平成24年度は電極の小型化を検討し、電極サイズを52%縮小することに成功した。(3) について、LHDにおいて4つの磁場配位で生成されたプラズマを対象として電極バイアス実験を行い、その全てで、ポロイダルイオン粘性の遷移を実現し、遷移条件の磁場配位依存性を取得することに成功した。さらに、実験結果は従来の新古典モデルでは説明できないことがわかった。実験結果は、プラズマの有限ラーマ―半径効果まで考慮したモデルを適用することによって、説明可能であることを示した。 さらに本研究では、Heliotron Jの電極バイアス実験において、放電中に自発的な遷移/逆遷移を繰り返す、間欠的な閉じ込め改善現象を発見した。この現象の発見は、当初の研究計画にはなかったものであり、遷移に対するポロイダル粘性の役割の検証研究を進展させる興味深い結果である。 以上より、平成24年度の研究は当初計画以上に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本研究課題の総括を行う。すなわち、イオン粘性の磁場リップル構造依存性を解明し、遷移に対する粘性の役割を明らかにするために、LHD並びに、LHDとは装置サイズ・磁場構造の大きく異なるトロイダル装置であるTU-Heliac、CHS、ヘリオトロンJでの粘性の振舞いを規格化したパラメータで整理し、データベース化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究計画の主たる内容は、本研究課題の総括であるため、備品等の購入は行わない。研究費は、研究に必要な消耗品の購入費、Heliotron Jでの実験のための出張費、一回の国内会議(第30回プラズマ核融合学会)、二回の国際会議の出張費(40th European Physical Society Conference on Plasma Physics, 19th International Stellarator Heliotron Workshop)、二編の論文投稿費用として使用する。
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Research Products
(18 results)