2011 Fiscal Year Research-status Report
微視的ビーム誘起発光測定による核融合環境下セラミック特性変化の研究
Project/Area Number |
23760815
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
田中 照也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30353444)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | カソードルミネッセンス / セラミック / 核融合炉 |
Research Abstract |
既存の走査型電子顕微鏡システムの鏡筒に、電子ビーム誘起発光(カソードルミネッセンス)を集光して鏡筒外に導くための、集光ミラーおよび光ファイバーを設置した。鏡筒外に導かれたビーム誘起発光に対し、(1)冷却型CCD分光器による可視波長領域でのスペクトル測定、および(2)手動分光器、光電子増倍管、前置増幅器、増幅器を用いた特定波長の発光強度の取得、が行えることを確認した。電子顕微鏡システムのビームスキャンおよび信号処理機能により、セラミック試料の2次元発光分布像が取得されており、本課題で計画していた電子ビーム誘起発光測定装置の基本部分の構築を完了した。 発光強度の大きいYAGディスク試料を用いてシステムの調整を行った後、核融合炉ブランケット用セラミックとして研究を進めている酸化エルビウム(Er2O3)焼結ディスク試料の表面観察に本装置を適用した。分光器によりEr2O3からの660nmの赤色発光を選択し、その発光強度の2次元分布像を取得した。通常の反射二次電子像では判別できない、表面の材料分布を浮かび上がらせることができ、μmオーダーの空間分解能でのセラミック材料の分布、および、結晶性等の分布評価に使用できることを確認した。そのほか、電子ビームの電荷蓄積(チャージアップ)による像の歪みを抑えるための帯電防止コーティングを試料表面に施しても、発光強度は低下しない等、技術的な確認を行った。 測定システム構築と並行して、次年度以降の研究において本測定システムの適用となるブランケット材料を拡げるため、既存の電子ビーム照射装置(空間分解能はmmオーダー)を用いて、炭化ケイ素、窒化アルミ、炭化ホウ素等の発光スペクトル、発光強度データの取得を行った。また、本測定手法を用いて結晶性分布を評価する対象として、Arイオンビームにより、照射損傷を導入したEr2O3試料の製作を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の23年度計画に沿って、電子顕微鏡システムへの電子ビーム誘起発光(カソードルミネッセンス)測定ユニットを装着し、核融合炉用として研究中のセラミック材料の発光について、μmオーダーの空間分解能での2次元分布像を取得できている。今後、光電子増倍管からの発光測定信号のS/N比を向上させることや、電子顕微鏡の外部コンピューター制御、データ処理手法の高度化等、測定効率を上げるために、改良が望ましい点は見出されたものの、当初計画の内容はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
酸化エルビウム以外の液体ブランケット用として研究を進めているセラミック材料に本年度構築したビーム発光測定装置を適用する。酸化イットリウム、炭化ケイ素、窒化アルミ、酸化アルミ、炭化ホウ素等を想定している。 特に(1)材料焼成条件の制御により、異なる結晶性を持たせたセラミック試料、(2) 高温液体Li、Flibe等の冷却材への浸漬により、表面を化学腐食させた試料、(3) イオンビーム照射により、表面層に照射損傷を与えた試料、を対象とし、μmオーダーの空間分解能での電子ビーム誘起発光(カソードルミネッセンス)分布の取得を計画している。これらの測定により、核融合炉用セラミック材料の初期結晶特性、および、各種核融合炉環境模擬試験後のセラミック特性の分析、現象の機構解明に本手法が有効であることを示す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度からの繰り越し分の740円については、24年3月中旬に、薄膜試料作製に必要となる消耗品に使用している。支払いが4月になったため、繰り越し分として現れているものである。H24年度の使用計画については、 (1)現在、核融合炉ブランケットにおける電気絶縁、および、水素燃料投下抑制を目的とした、大面積Er2O3被覆の試作研究を進めている。本課題で構築している電子ビーム誘起発光測定装置を用いることで、この被覆の初期特性および熱サイクル試験等の核融合環境模擬試験後の特性変化を、μmオーダーの空間分解能で、評価できるようになる。その結果について、成果として国際会議において報告する予定である。 (2) Er2O3以外の酸化物系セラミック材料への本手法の有効性を示す目的で、MOD(Metal Organic Decomposition)法による薄膜試料の作成を行い、発光分布の取得を行う。このためのMOD製膜用溶液の入手を行う。 (3)2次元分布測定の精度向上のために、分光器の代わりに光フィルターによる波長選択を行うことを考えており、光フィルターの入手を行う。
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