2011 Fiscal Year Research-status Report
第三世代コンプトン散乱X線CTによる高速電子密度イメージング
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23760824
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡辺 賢一 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30324461)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 陽子線治療 / 治療計画 / 放射線イメージング |
Research Abstract |
既存設備である小動物用X線CT装置のX線源にファンビームコリメータを設置し、さらにX線照射野内に被写体固定および自動回転機構を設置し、X線照射方向に対し90度方向に2次元フラットパネルX線検出器および平行平板コリメータを設置し、第三世代コンプトン散乱X線CT装置を模擬した特性評価試験装置を構築した。 この特性評価試験装置を用い、まず、X線減衰の効果の小さい小型標準試料に対してコンプトン散乱X線CT技術による断層像撮像実験を行った。被写体の自動回転及び2次元プラットパネルX線検出器による撮像タイミングを自動制御する制御系を構築した。また、装置内の種々の構造体からの散乱線の影響を除去するための、撮像画像の前処理手法を検討し、第三世代コンプトン散乱X線CTのためのサイノグラムを取得することに成功した。 画像再構成法としてはML-EL法を採用し、実際に第三世代コンプトン散乱X線CTによる断層画像の撮像に成功した。得られた画像の画質を指標に、平行平板コリメータの厚みおよび間隔に関する最適を試み、厚さ1 mmのSUS板を1 mm間隔に並べることにより、数mm程度の分解能が得られる見通しを得た。最終的に得られた画像の空間分解能は十分とは言えず、画素値が必ずしも電子密度を反映したものでは無かったが、画像再構成法であるML-EM法の初期画像に透過X線CT像を用い、入射X線の減衰補正を施すことで、透過X線CTと同程度の画質で、電子密度を反映した画素値分布を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、最終的な目標として、第三世代コンプトン散乱X線CT技術に基づく新しい高速電子密度イメージング法について、1)その成立性の実証を行うと共に、2)性能の最適化に向けた系統的な基礎検討と3)実用化のためのシステム設計提案を行うことを目的とする。 本年度は特に、成立性の実証と性能の最適化に向けた系統的な基礎検討を目標に掲げて研究を進めた。透過X線CTとコンプトン散乱X線CTを組み合わせ、X線の減衰補正を施すことで、電子密度分布に対応する画像を取得することに成功し、本手法の成立性については確認することができた。また、最適化に向けた系統的な基礎検討の一環として、平行平板コリメータの幾何形状に関する検討を進め、最終的には目標としている数mmの空間分解能を得る見通しを得た。 以上のように、本年度の研究進捗状況としては概ね順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の検討で、被写体内でのX線の減衰の効果を補正することの必要性が明らかになった。しかしながら、現状では減衰補正を行うための計算には非常に長い計算時間を要している。そこで、次年度は、この減衰補正計算手法の高度化に重点的に取り組む予定である。 また、現状でも減衰補正計算を実施しているが、寸法の比較的小さな被写体での評価に限られており、被写体寸法を大きくした際の、減衰補正の有効性についても評価する必要がある。必要に応じて、2次元検出器を自動的に直線移動可能な構造を追加し、大面積検出器を模擬した測定を実施可能な試験装置の構築を行う予定である。 以上を通して、本方式の総合的な性能評価を行なうと共に、実機システムの設計に必要な知見を得ることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の、研究項目としてX線の減衰補正を高速に実施するアルゴリズムの構築および大型被写体における減衰補正の有効性の検証の二点を大きな目標として掲げている。このため、高速計算アルゴリズムに関する検討を進めるための計算機および、大型被写体に対する撮像が可能な、疑似大型二次元X線検出器システムの整備を行うための自動ステージおよびコントローラを購入予定である。 また、得られて成果についても、学会および論文発表を通して積極的に進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)