2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23760825
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
富田 英生 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20432239)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 中性子イメージング / 熱外中性子 / ガス検出器 / 共鳴フィルタ |
Research Abstract |
硼素中性子捕捉療法や原子炉における放射化量評価においてその利用が進んでいる熱外エネルギー領域の中性子(熱外中性子)の空間分布を高精度・高分解能に測定できる画像検出器を開発することを目的とし、ガス電子増幅器(GEM)を用いた中性子画像検出と共鳴フィルタ法による熱外中性子の選択的検出に基づく画像検出器を開発を行った。今年度は、熱外中性子の共鳴吸収と競合する熱中性子吸収を抑える熱中性子遮蔽の最適化と格子状共鳴フィルタの試作を行った。本検出器における熱中性子遮蔽として、共鳴フィルタ有無による共鳴ピーク以下の低速中性子成分に対する感度の差異を抑制するために、10Bを利用することとした。10B厚さを変化させて共鳴フィルタ有無の差から得た検出効率と、その検出効率に対する対象エネルギーの熱外中性子による寄与割合を計算した結果、0.1mm程度と見積もられた。Ag製の格子状共鳴フィルタを用いた試作検出器について、京都大学原子炉実験所電子線形加速器(KURRI-LINAC)パルス中性子源において、応答関数と空間分解能を実験的に評価した。その結果、共鳴ピークに対応する熱外中性子強度に対応した計数が得られ、その検出効率は10^-4であり、得られた検出効率は、モンテカルロシミュレーション計算モデルとよく一致することが示された。さらに、直径22mmφの熱外中性子ビームに対し空間分解能5mm以下を実現できる可能性を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に実施予定であった項目のうち、熱外中性子画像検出器の基本構成要素の応答評価と共鳴フィルタ厚さ・熱中性子遮蔽材厚さの最適化は滞りなく実施された。一方、機能性共鳴フィルタの検討については、コーデットアパーチャーの適用検討を一部実施したのみであったため、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、格子状共鳴フィルタ形状を用いた試作検出器による基礎実験を行い、基本構成要素の特性評価を実施した。平成24年度は、前年度の結果をもとに、下記の3項目を実施する。(1)機能性共鳴フィルタの検討: BNCTにおける熱外中性子照射場はおよそビーム状であるとされるが、検出器に対する中性子入射方向により空間分解能の低下が予想される。そこで、コリメータとしての機能も有する3次元形状の共鳴フィルタ、またコーデットアパーチャーを利用した共鳴フィルタの検討を行う。中性子輸送シミュレーション計算を基にこれらの検討を進め、熱外中性子イメージングの高空間分解能化・高効率化を検討する。(2)GEM2次元読み出し電極および計数回路系の設計・構築: 各領域における計数と隣接する共鳴フィルタあり/なしの領域での計数の差し引きし、各画素からの計数差を並列読み出しする読み出し回路系をプログラマブルロジックデバイス(FPGA)にて設計・作成するとともに、読み出し回路系の許容計数率等の特性を評価する。ここでは、名古屋大学大学院工学研究科が所有するCf-252中性子源などを使用する。(3)共鳴フィルタ法による熱外中性子イメージングの特性評価と適用性検討: 読み出し回路を用いてビーム状熱外中性子のプロファイル測定を行い、本検出器の熱外中性子イメージングにおける空間分解能、コントラスト(バックグラウンドの評価)、検出器入射面に対する応答の一様性など評価する。これらをもとにBNCT熱外中性子照射場や非破壊元素分析に対する適用性を示す。ここでは、主に京大炉LINACパルス中性子源およびAIST熱外中性子源を用いて実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度、実施予定であった機能性共鳴フィルタの検討・設計と試作を一部のみ実施したため、平成24年度に997千円の繰越がある。今年度は、・中性子輸送シミュレーション計算を基にした機能性共鳴フィルタの設計・検討を行うために、計算機を購入するとともに、試作を行う。・GEM2次元読み出し電極および計数回路系の構築のために、2次元読み出し電極と計数回路系を購入する。・熱外中性子イメージングの特性評価のために、京大炉LINACパルス中性子源およびAIST熱外中性子源を用いて実験を行うための旅費・運搬費・消耗品費等を支出する。
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Research Products
(6 results)