2011 Fiscal Year Research-status Report
含水溶融塩中のウラニル及びネプツニルのラマン分光分析研究
Project/Area Number |
23760827
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 俊行 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (10314296)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ラマン分光 / ウラン / ネプツニウム / 含水溶融塩 |
Research Abstract |
含水溶融塩は、少量の水を含んだ塩が融解した高濃度電解質溶液であり、無水塩の溶融塩に比べてより低温で融解することと、含有する水の活量が著しく小さいことが特徴である。本研究は、将来的な放射性廃棄物処理処分に関連するアクチニドを用いた化学研究の一環として、含水溶融塩中に溶存したウラン及びネプツニウムの配位状態を、ラマン分光分析法を用いて明らかにすることを目的とする。アルカリ元素の塩化物塩として塩化リチウムを、アルカリ土類元素の塩化物塩として塩化カルシウムを選択し、低含水で低融点の含水溶融塩を調製した。溶媒塩の吸光分光分析、蛍光分光分析、及びラマン分光分析を行った。低波数領域におけるカチオン-配位子間の振動を確認した。溶媒塩の分光特性が、アクチニルイオンの振動エネルギーに干渉しないことを確認した。三酸化八ウランを塩酸に溶解し、ウランを含有する塩酸溶液を調製した。ウランの濃度をICP質量分析計を用いて決定した。このウラン溶液を分取して乾固し、調製した溶媒試料を添加することにより、低含水のウラン試料を調製した。調製した試料についてラマン分光分析を行った。波数850cm-1付近に、O=U=Oの対称伸縮運動に関する振動エネルギーν1が観測された。この振動エネルギーは、溶媒塩の種類によって波数が数cm-1シフトすることが明らかになった。同試料を用いて吸光分光分析及び蛍光分光分析を行った。紫外可視領域にU(VI)の特徴的な吸光を観測した。共存塩素による蛍光の消光を確認した。ウラニルの水和錯体について分子軌道計算を試行し、O=U=Oの振動エネルギーを計算した。実験値よりも数十cm-1高い計算結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、ウランを含有する試料の調製、ラマン分光分析、及び計算化学実験、のすべてを遂行できている。研究の目的通り、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に調製したウラン試料のラマン分光分析を継続して行う。試料を加熱もしくは冷却することにより、試料の温度を変え、室温と異なる温度条件でのラマン分光分析を行う。ウラニルのO=U=Oの対称伸縮運動に関する振動エネルギーν1を測定し、温度変化が振動エネルギーに与える影響を評価する。新たにウラン試料を調製して、ウラニルのラマン分光分析を行う。アルカリ元素(Na、K、Rb、及びCs)及びアルカリ土類元素(Mg、Sr、及びBa)の飽和水溶液を調製し、これに塩化ウラニルを溶解することにより試料を調製する。O=U=Oの対称伸縮運動に関する振動エネルギーν1を測定し、溶媒の含水量と振動エネルギーの関係及び水の活量と振動エネルギーの関係を明らかにする。分子軌道計算については、ウラニルの赤道面に塩化物イオンが配位した際の錯イオンについて計算を行い、O=U=Oの全対称振動エネルギーを計算し、ラマンスペクトルとの整合性を評価する。ウランに関する実験から得られた知見を基に、ネプツニウムを用いた実験へと研究を進める。ネプツニウム試料としては、ネプツニウム放射性同位体試料(Np-237)を用いて実験を行う。ネプツニウム溶液の化学形を調整し、含水溶融塩に溶解する。ネプツニルイオンのO=Np=Oのラマン振動に着目し、ラマン分光分析を行う。当初計画からの研究計画の変更はない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じた理由は、本研究の情報収集のために参加した放射化学の国際会議への派遣期間が年度をまたいだからであり、当該研究費は翌年度初めに執行される。
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