2011 Fiscal Year Research-status Report
円筒型核融合装置による分析用小型中性子光源の研究開発
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23760828
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
登尾 一幸 京都大学, 生存基盤科学研究ユニット, 助教 (40456827)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 中性子 / 核融合 / 非破壊検査 / 放電管 |
Research Abstract |
様々な分析用途に適した形状とエネルギー分布を有する中性子ビームを発生可能な小型装置の開発のため、円筒型放電装置の改造とビーム形成部の構成について実験、シミュレーションにより解析を行った。放電装置の改造では、従来用いていた放電装置では陰極の機械的な保持が不十分なため位置精度が低く、特に高い中性子発生の期待できる高電圧・低ガス圧領域での放電が不安定になるという問題があった。そのため、真空容器を電極間絶縁支持材が兼ねる構造とし、この変更に合わせ給電系や動作ガス吸排気系を変更した。試作段階であるため十分な性能は発揮できていないが、同時に開発した2次元粒子シミュレーションコードによるイオン・電子軌道解析結果と比較すると、電極形状に対する放電特性は傾向的に一致する結果を得られた。一方、ビーム形成部の改良のため、主にMCNPコードによるニュートロニクス計算を行った。単一の材料を反射材として用いた場合に加え、複数の材質を組み合わせた複合反射材を提案し、評価を行った。各種材質の特徴をふまえ、ポリエチレン(PE)、重水(D2O)、鉄(Fe)、タングステン(W)、バナジウム(V)を反射材料として選定し、さらに反射材を内層と外層に分け別の材質で構成した場合について計算した。評価は円筒軸上の中性子強度分布、ビームの収束度、中性子速度の平行度、エネルギースペクトルにより行った。その結果、いずれの反射材を用いた場合にも収束度、平行度は十分揃っており、外層=PEあるいはW、内層=Feとした場合には高速中性子、外層=PE、内層=D2Oとし、さらに減速材として重水を用いた場合には熱中性子がそれぞれ効率的に得られることがわかった。以上の結果より、本中性子源の開発のための放電部の改良の見込みが得られ、またビーム形成部により用途に適した特性をもつ中性子ビームの生成が可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載の通り、MCNP(既存コード)を用いた解析とと粒子コードの作成は順調に進んでいる。特にMCNPによるニュートロニクス解析では、実施計画に記載した内容だけでなく、さらに発展させ複合反射材の評価まで行った。実験では、大きく分けて放電部の改良と、実際に反射材・減速材を用いたビーム化実験が必要であり、当初計画では後者をH23年度、前者を24年度に割り振っていた。しかし、より高出力を得るためには元の発生装置(放電部)の改良がより優先度が高いと判断し先行して放電部の改良に着手した。また、エネルギー分布の評価は、様々な材質に対する計算結果と測定結果を比較する方法について行っている。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
順調であり、おおむね当初の計画に従い進める。ビーム形成部のニュートロニクス計算では、反射材や減速材の形状をさらに変化させ(単純な円筒形状から複数チャンネルを有する構造や管壁をテーパー状にしたものなど)評価を行う。実用段階では単一の放電管で出力が不足する場合には複数の放電管を組み合わせることも考えており、その場合についても十分なビーム特性が得られるか確認を行う。また、計算だけでなく実験可能な材料を用いてビーム生成実験が可能であれば実行する。放電部の改良について、H23年度に引き続き、より高電圧での放電が安定して可能となるよう、粒子シミュレーションコードとあわせ装置の改良試作を行う。シミュレーションコードは現状では円筒対称座標系での電界計算と粒子の軌道計算が可能であり、さらに原子分子過程をモンテカルロ法により組み込むことで実際の放電を模擬できるようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品の購入および成果発表のための旅費が主となる。電極形状を変更した放電実験のための電極、絶縁支持材の試作やそれらの交換時のガスケットや配管部材、測定用電子部品等の消耗品として使用する予定である。実験頻度に応じ、重水素ガスが不足すれば追加で購入する。また、国内学会での発表にはすでに応募しており、また国際学会あるいはワークショップでの発表も視野に入れている。
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Research Products
(5 results)