2011 Fiscal Year Research-status Report
マテリアルフローを考慮に入れた物質・エネルギー統合モデルの構築に関する研究
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23760842
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小宮山 涼一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60537819)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | エネルギー需給 / 物質需給 |
Research Abstract |
本研究の交付申請時の研究目的は、鉱物資源等の物質需給やその国際貿易等のマテリアルフローを考慮し、世界のエネルギー、物質全体を総合的に分析する物質・エネルギー統合モデルを構築することにある。そこで本年度は、各産業の物質フローを産業連関表を元に考慮した上で、さらに、工学的要素と経済学的要素を整合的に分析可能な新しい物質・エネルギーモデルのプロトタイプを開発した。具体的には、従来の応用一般均衡モデルに対して生産者サイドを中心とした独自の定式化を行い、工学的プロセスを考慮可能なボトムアップ型の多部門経済モデルの簡易版を開発した。本研究では、世界を対象にした分析を目的としているが、国際的な応用一般均衡モデルのデータベースとして知られるGTAPデータベースを用いることで、世界を3地域に分割し、世界の物質フローを考慮できるようにモデルを開発した。また上記のモデルを用いて、原子力発電への依存度や、CO2排出量に上限制約を課したシナリオの下で、世界の各産業の物質生産や物質フロー、さらには経済成長へ与える影響を予備的に評価した。その結果、原子力発電低減による短期的な影響評価では、原子力発電100%低減時に名目GDPが約2%減少する結果となった。また、CO2排出量を25%削減させた際、GDPは約7%低下し、電力価格は約50%上昇する結果となった。 本研究の当初の目的では、技術のみに着目したモデルの開発を行う予定であったが、物質フローや産業活動は経済にも大きく依存する。そこで本年度は、技術のみならず、経済も考慮に入れたモデル開発に取り組んでおり、当初の研究目的を超えうる物質・エネルギー統合モデルの開発に着手している。また、現在、日本においてエネルギー政策の改定作業が行われているが、本研究では、予備的評価ではあるが、原発依存度が物質フローや経済に与える評価をタイムリーに実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究目的は、鉱物資源等の物質需給やその国際貿易等のマテリアルフローを考慮し、世界のエネルギー、物質全体を総合的に分析する物質・エネルギー統合モデルを構築することにある。 本年度は、世界の各産業の物質フローを産業連関表を元に考慮した上で、工学的要素のみならず、経済学的要素も考慮した物質・エネルギーモデルのプロトタイプを開発した。 そのため、本研究の進捗状況としては、概ね実施計画書に基づき、順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の研究目的は、鉱物資源等の物質需給をモデル化することに主眼を置いている。そのため、物質需給の中でも最も世界のエネルギー消費や経済に影響度の大きい鉄鋼部門に特に着目し、当該部門の物質フローに関するデータやモデルの詳細化を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
鉄鋼部門等の物質フローとそれが経済、産業に与える影響に関してデータやモデルの詳細化を実施するため、鉄鋼部門や経済、産業組織等に係る学術図書の購入経費や、本研究の学会発表を行うための学会参加費等の出張経費、また、開発したモデルによる計算処理能力を向上させる必要が生じた場合は、サーバ等の購入経費として、研究費を使用する予定である。
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