2012 Fiscal Year Annual Research Report
マテリアルフローを考慮に入れた物質・エネルギー統合モデルの構築に関する研究
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23760842
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小宮山 涼一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60537819)
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Keywords | 多部門経済モデル / 鉄鋼 / エネルギー / 地球温暖化 / 環境政策 / エネルギー政策 / 一般均衡モデル |
Research Abstract |
従来の応用一般均衡モデルはトップダウン型のモデルであり,一般均衡理論に基づいて産業構造の整合性を保った均衡解を求めることが可能で,実証分析においても数多くの実績がある.しかし一方で,企業に関するモデルは部門によらず一律に同じ分析手法が適用されており,各部門の技術的要素を記述するのが困難である.またボトムアップ型のモデルは技術的要素を詳細に記述することが可能であるが,他の産業,ひいては経済全体への波及効果を議論することが困難である. そこで本研究では,従来トップダウンの視点から構築されてきた応用一般均衡モデルにエネルギー多消費産業である鉄鋼業のボトムアップ的な視点を加え,市場競争のみならず設備や技術の制約を考慮した新しい計算モデルを構築した. 本研究では特に鉄鋼部門を詳細にモデル化した.鉄鋼業の製鋼法には鉄鉱石を原料とする高炉・転炉法と,スクラップを原料とする電気炉法があり,鉄鉱石の還元剤として石炭を用いる高炉・転炉法に比べて電気炉法の所要エネルギーははるかに少ない.また,圧延や鋳造の工程においても鉄鋼業は多量のエネルギーを消費するため,エネルギーの回収・再利用や工程の省略・連続化のための努力が続けられてきた.このような背景から,鉄鋼業においてボトムアップ的に工学的プロセスを詳細化し,それぞれの環境負荷や設備制約などの要素を考慮可能にすることは,エネルギー・環境・経済を整合的に考慮できるエネルギーモデルにとって重要であると考えられる. 上記のモデルを用いて分析した結果,日本の過度なCO2制約は,国内鉄鋼生産の大幅な減少と,海外からの鉄鋼輸入量の増加を促し,結果的に日本の経済成長を大幅に低下させる可能性のあることが分かった.本数値シミュレーション結果より,日本の温暖化政策を考える上で,示唆のある結果を得ることができた.
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Research Products
(2 results)