2011 Fiscal Year Research-status Report
マルチエージェントによる家庭内エネルギー消費の再現と太陽エネルギー利用影響の分析
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23760848
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
大藏 将史 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90453810)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | マルチエージェント / 太陽エネルギー利用 / 太陽熱温水器 / エネルギー需要 / 給湯システム |
Research Abstract |
家庭における居住者の属性を分類し,行動種別と行動時間帯,行動所要時間を分析した.これら分析したデータを用いて需要データを時間ごとに生成するモデルの基盤を作成した.また,あらかじめ定められた行為以外については気象条件が大きく影響される.今年度は仮の属性として,外気温度に対して給湯需要(浴槽の湯張りの有無)を変化させ,給湯需要の推計を行った.これにより需要データの生成が可能となったが,統計データは異なる家族の行動を平均して記載されており,個人の相互作用が見込まれていない.従って各家族エージェントの行動の相互作用について検討する必要があることが分かった. 上記で得られた給湯需要に対し,太陽エネルギー利用設備の導入効果を分析した.本年度は現在普及が進展している家庭用ヒートポンプ給湯機と太陽熱温水器を組み合わせた給湯システムについて,太陽熱温水器の設計・運転条件を推計した.これは太陽熱温水器の導入により太陽光発電余剰電力の抑制が期待できる反面,温水器の使用は給湯需要に制限されるため,エネルギー消費削減効果が外気温度により大きく変動するためである.また,ヒートポンプ給湯機では貯湯槽に温水を貯湯するため,温水温度によっては太陽熱温水器で正味の熱を取得できない可能性があるためである.結果として,平板型太陽熱温水器によりエネルギー削減効果を得るには太陽熱温水器への温水供給位置を貯湯槽高さの4分の1以下の位置に設置する必要があることを明らかとした.さらに,4人家族を想定した場合,冬期においては2平米以下の太陽熱温水器集熱面積ではヒートポンプのエネルギー消費削減効果がないことを明らかとした.これは貯湯槽からの放熱が大きいことに加え,太陽熱温水器の集熱効率が大きく低下するためである.これにより,これまで考えられていないヒートポンプ給湯機と太陽熱温水器の併用時における設計条件が明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家庭におけるエージェントモデルの基本的な基盤および太陽熱利用モデルの構築を完了した.一方で家庭においては各個人の相互作用をより詳細に検討し,これまでの平均化されたデータをもとに,より幅のある需要データを推計する必要がある.特に家庭におけるエージェントの行動については,より相互作用が大きいという研究報告もあり,この点について新たな行動決定方針が必要であると考えられる. また,エネルギー需要の分析と需要モデルの作成に大半の時間を要したため,平成23年度中は太陽エネルギー利用に関する具体的な研究成果の公表には至っていない.本研究の主なテーマである余剰電力量と家庭の需要について,平成24年6月にこれまでの成果を学会にて発表予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度においては,モデルの実行に必要となる計算機設備,およびモデルの基盤となるプログラムの作成を重視した.平成24年度においては,これら平成23年度に構築した家庭エネルギー需要の基盤モデルを利用し,具体的な太陽エネルギー利用設備の導入効果を検討する.特にこれまで設定していた暫定的なエネルギー需要について,より不確実性を得られるようエージェントモデルを改良する.また,平成23年度に貯湯槽における熱放出を考慮した,太陽熱温水器を補助熱源とするヒートポンプ給湯モデルを作成した.これを利用して給湯に必要となる太陽熱温水器の集熱面積と運転条件を明らかとすることができたため,さらに太陽光発電導入時のエネルギー消費削減効果について検討する.また,自家消費の最大化や,売電による設備投資回収優先など,異なる指針における最適設備容量の検討を行い,家庭における意思決定が余剰電力量に与える影響を検討する.これら平成23年度の基盤をもとに,具体的な研究成果の発表を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度においては必須となる計算機設備ならびにモデル作成の資料を購入した.計算モデルは家庭のエネルギー消費を1秒単位で計算し積み上げるため,計算には高性能な計算機を複数台必要とする.モデルの拡大に伴い,必要性が生じた場合には計算機を追加する予定である.また,資料についても家庭の建材など,熱環境の再現に必要となる資料のほか,実際の家庭のエネルギー消費に関する報告書を購入予定である.また,研究成果の論文投稿,学会発表に使用する予定である.
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