2011 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロクロマチン形成・維持に果たすヒストンシャペロンの役割に関する研究
Project/Area Number |
23770001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高畑 信也 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50381588)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ヘテロクロマチン / ヒストンシャペロン / Spt16 / Pob3 / Nhp6 / クロマチン |
Research Abstract |
ヒストンシャペロン活性を有するクロマチン因子FACTがヘテロクロマチン形成に及ぼす影響に付いて分裂酵母を用いて解析を行った。酵母のFACTは3つのタンパク質Spt16, Pob3, Nhp6から構成される複合体であり、申請者が現在までに行った研究からNhp6がその正電荷豊富なタンパク質の特性を利用してDNAに非特異的に結合し、ヒストンシャペロン活性を持つ他の二つの構成因子Spt16とPob3を呼び込む事が予想された。しかしながら分裂酵母を用いた遺伝学的・分子生物学的解析からFACTはヘテロクロマチン形成領域に強力に結合するものの、その結合はNhp6に依存しない事が明らかとなった。Nhp6の性質ゆえにFACTは染色体上に普遍的に存在すると考えられているが、その普遍性ゆえに解析が困難な一面をもつ。本研究では新たにヘテロクロマチン形成に中核的役割を果たす分裂酵母ヘテロクロマチンタンパク質Swi6がFACT複合体中のPob3と相互作用する事が明らかとなり、Nhp6に非依存的なSpt16-Pob3のヘテロクロマチン形成領域へのリクルートメント機構を明らかにした。真核生物中で分裂酵母は唯一pob3遺伝子破壊が可能なモデル生物でありpob3破壊株を作製して分子遺伝学的解析を行った。非常に興味深い事にpob3遺伝子を破壊するとヘテロクロマチンに依存するサイレンシングは大きく脱抑制されるのだがヘテロクロマチンの指標となるヒストンH3K9のメチル化量やそれに結合するヘテロクロマチンタンパク質Swi6の量に変化はなくヘテロクロマチン構造そのものに影響は無いように見受けられた。この表現型は当研究室のスクリーニングから単離された他の変異株でも見受けられ更なる解析が必要になると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画および研究目的において平成23年度には以下の3点に焦点を当てて研究を進めた:1.へテロクロマチン形成・維持に必要なヒストンシャペロンの同定、2.FACTによるへテロクロマチン形成・維持機構の解明、3.新規H3K9メチル化領域およびHP1結合領域の探索。1.「へテロクロマチン形成・維持に必要なヒストンシャペロンの同定」に関してはヒストンシャペロンをコードする遺伝子を破壊してその表現型を確認し、明瞭な表現型を示すものを選択的に解析中である。その中でも特に顕著にヘテロクロマチン形成異常を示したものがpob3遺伝子であった為、現在はpob3に関する解析を中心に行っている。2.「FACTによるへテロクロマチン形成・維持機構の解明」に関してはNhp6に依存しない新たな機構の発見とFACTリクルート因子Swi6の発見、pob3破壊によって生じるヘテロクロマチン構造の変性の発見と順調に研究が進行中であり、今後の複数報の論文発表が予測され更なる研究の進展が大いに期待できる。3.「新規H3K9メチル化領域およびHP1結合領域の探索」に関しては研究を進めて行く間に海外の研究者からゲノムワイドに解析を行った先行論文が出されてしまった。しかしながら詳細な分子機構は不明瞭な点が多く、先行論文を参考にしながら本研究を掘り下げて行く価値があると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.「G1/S期特異的転写因子がFACTをへテロクロマチン上に呼び込むのか?」セントロメア近傍のへテロクロマチンはG1/S期にかけてRNA polymerase IIによって非コードRNA(ncRNA)に読み取られて後にncRNAがRNA干渉(RNAi)の経路に入り、断片化干渉性RNA(siRNA)として特定領域の転写抑制に寄与する事が知られているがG1/S期でどのような転写因子がRNA polymerase IIをへテロクロマチン上に呼び込んでいるのかは不明である。出芽酵母の場合G1/S期特異的転写因子SBFがFACTと一過的に直接相互作用して転写調節を行う。本研究ではSBFの分裂酵母ホモログであるCdc10、その抑制因子Whi5、Cdc10への結合が予測されるFACTに着目して前年度の研究をさらに進める。2.「染色体上の新規H3K9メチル化領域の解析」先行論文を参考にしつつ特定薬剤耐性に必要な遺伝子プロモーターの解析を継続させる。特に遺伝学的手法によって薬剤耐性に必要な遺伝子の転写因子の同定、H3K9メチル化酵素Clr4を染色体上にリクルートしてくる抑制因子の同定を試みる。同時にH3K9のメチル化が染色体上のどの領域に観察されるのか、H3K9me上に結合するHP1タンパク質はSwi6とChp2のどちらなのか、もしくは両方なのか、HP1がRNAi非依存的なサイレンシングにおいてどのような因子をリクルートしてくるのか、転写が活性化される際にClr4によってメチル化を受けていたH3K9は脱メチル化されるのか、脱メチル化される場合どの酵素によって行われるかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
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