2012 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロクロマチン形成・維持に果たすヒストンシャペロンの役割に関する研究
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23770001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高畑 信也 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50381588)
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Keywords | ヘテロクロマチン / ヒストンシャペロン / Spt16 / Pob3 / FACT / クロマチン / ヒストンH2A / ヒストンH2B |
Research Abstract |
前年度に引き続き、ヒストンシャペロン活性を有するクロマチン因子FACTがヘテロクロマチン形成に及ぼす影響に付いて分裂酵母を用いて解析を行った。まずSpt16とPob3の相互作用を切る為に、Spt16内に存在するPob3結合領域を同定し、欠損変異体Spt16ΔPID(Pob3 Interaction Domain)を作製し、この変異体がヘテロクロマチンに及ぼす影響をレポーターアッセイによって観察した。その結果pob3遺伝子欠損変異株はヘテロクロマチン崩壊様の表現型を示すものの、Pob3との結合能を失ったSpt16ΔPID株はヘテロクロマチン崩壊様の表現型を示さなかった。 上記の実験結果に加えてFACT複合体の生化学的精製をゲル濾過クロマトグラフィー法で行った所、Spt16/Pob3複合体の存在に加えてフリーのPob3タンパク質が多量に存在する事が明らかとなった。加えてヘテロクロマチンタンパク質のSwi6とSpt16の結合も確認された結果、ヘテロクロマチン形成・維持においてFACT複合体はSwi6に依存してヘテロクロマチン上にリクルートされる分子メカニズムに加えて単体のPob3をヘテロクロマチン上にリクルートする未知の分子メカニズムの存在が示唆された。 またpob3遺伝子破壊株中でヘテロクロマチンが崩壊する理由を調べた結果、ヒストンH2A/H2Bが抜け落ちたようなヘキサマー/テトラマータイプのヌクレオソームの蓄積がヘテロクロマチン領域内に観察された。このヌクレオソームの異常によって引き起こされるヘテロクロマチンの崩壊はヒストンH2AもしくはヒストンH2Bの過剰発現によって抑制させることから、FACT複合体はヌクレオソームの動的制御機構を通じてヘテロクロマチンサイレンシングを維持する事が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画および研究目的において平成24年度には以下の2点に焦点を当てて研究を進めた:1.FACTによるへテロクロマチン形成・維持機構の解明、2.新規H3K9メチル化領域およびHP1結合領域の探索。 1.FACTによるへテロクロマチン形成・維持機構の解明:Spt16に変異を導入する事でSpt16とPob3の結合を切る事に世界に先駆けて成功した。この変異株を用いた解析を進める事でpob3遺伝子破壊株内におけるヘテロクロマチン崩壊の分子メカニズムの一端が明らかとなった。このテーマについては極めて新規性の高い重要なデータが蓄積しつつあり、今後の進展が大いに期待できるように思われる。 2.新規H3K9メチル化領域およびHP1結合領域の探索:新学術領域「ゲノム支援」によるサポートを受けて、分裂酵母野生株でのH3K9me2 ChIP-sequencingを実施したがセントロメア近傍、MAT領域近傍、テロメア近傍以外に際立ったH3K9me2ピークは観察されなかった。今後はヘテロクロマチン/ユークロマチンの境界を決定する因子epe1遺伝子破壊株を用いてH3K9me2 ChIP-sequencingを行い、境界の変動状態を高解像に解析する予定である。このテーマに関しては先行論文が複数報出されてしまっているが境界線の変動を追いかけた論文はまだなので研究を加速させていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.FACT複合体構成因子のSpt16、Pob3に結合するタンパク質群の解析 FACT複合体構成因子には現在までにいろいろな因子が結合する事が報告されているが構成因子Spt16、Pob3にそれぞれどのようなタンパク質が特異的に結合するのかは未知のままである。本研究課題で用いるモデル生物は分裂酵母であり、分裂酵母のpob3遺伝子は他の生物から比べて例外的に遺伝子破壊可能である。この特性を最大限活用してpob3遺伝子破壊株によるSpt16のIP-massを行う予定である。また研究実績概要でも述べたとおり、研究代表者はPob3との結合が切れるSpt16変異体の作製に成功している。これを活用してPob3特異的に結合する因子群の同定をIP-massで行う予定である。 2.クロマチン上に”ゆらぎ”を生み出すエピジェネティックマーク、モノユビキチン化ヒストンH2B(H2BK119Ub)とFACTの協調的なクロマチン制御 FACT複合体はヒストンH2A/H2Bダイマーのシャペロンとして機能し、八量体型ヌクレオソームの動的制御に対して極めて大きな役割を担っている。申請者の行った派生研究からヒストンH2Bのモノユビキチン化はFACTによる八量体型ヌクレオソームの動的制御に関して極めて重要な役割を持っているように思われる。この先行派生研究を更に掘り進めて、クロマチン制御の”ゆらぎ”依存性の分子メカニズムを探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品の納品が遅れ、24年度の研究費に未使用額が生じたが、次年度に納入されたため、今年度行う予定の研究計画と併せて実施する。
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