2011 Fiscal Year Research-status Report
哺乳動物細胞におけるrDNAクラスター維持機構の研究
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23770009
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
赤松 由布子 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 助教 (50381661)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | rDNA / ゲノム再編成 |
Research Abstract |
本研究では、rDNAクラスターを安定に維持するメカニズムの解明を目指しており、平成23年度は、以下の研究を行った。1)ヒト培養細胞(HEK293, HeLa, U2OS)のrDNAクラスターをパルスフィールド電気泳動で分離し検出した。HEK293やHela細胞では3Mb以上から1Mb以下の長さにわたって明瞭な異なる長さのバンドが複数本観察され、また細胞によってクラスター長のパターンが異なっていた。近交系マウス(C57BL/6)のrDNAクラスター長を調べた結果、遺伝的には均一であるにも関わらず、rDNAクラスター長に個体差が見られた。したがって、哺乳動物では各個体に特徴的な長さのrDNAクラスターが存在することが判明した。ヒト培養細胞U2OSでは、主に1Mb以下の短いrDNAクラスターがラダー状に観察された。U2OS細胞はALT(alternative lengthening of telomere)pathwayでテロメアを維持しており、heterogeneousなテロメア長を示すが、rDNAクラスター維持機構と関連が考えられ、大変興味深い。2)rDNAクラスターに存在するRFBを2次元電気泳動法で解析したところ、ヒト細胞では複数のDNA複製フォーク、pausing siteと1個のtermination siteが存在することが分かった。RFBに必要なcis配列を決定するために、SV40複製開始点を有するプラスミドにRFBを含むrDNA配列をクローニングし、HEK293T細胞中で複製フォーク中間体を検出した。しかしながら、SV40依存的な複製では複製フォークの進行を停止・終結しなかったので、cis配列を決定することが出来なかった。ただしこの実験からRFBにはSV40 large T抗原ではなく、内在性の複製機構が関与していることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度はrDNAクラスターを分離・検出するための実験系が確立し、複数のヒト培養細胞を解析した結果、rDNAクラスター安定性維持機構解析のための糸口を得た。また、SV40複製系の実験でRFBに必要なcis配列は解明出来なかったが、内在性の複製因子の関与が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
rDNAクラスターの安定性維持に必要なファクターを同定するために、siRNAによる遺伝子ノックダウンの実験を行う。またU2OSで見られたrDNAクラスターの異常とALT機構との関連を糸口として、ゲノム安定性維持機構の解明を目指す。RFBのメカニズムを解明するために、siRNAによる遺伝子ノックダウンを行い関連するファクターを同定する。RFBに必要なcis配列の決定のために、人工染色体を用いた実験系を構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には、siRNAを用いた遺伝子ノックダウンの実験を複数予定しており、siRNAやトランスフェクション試薬、発現確認のためのRNA精製試薬、RT-PCR試薬、抗体類など高額消耗品が多数必要になるため、平成23年度に予定していた予算を次年度に使用することにした。その他、制限酵素やプラスチック器具類の消耗品類を購入する。また、国内発表と海外発表を各1回と研究成果を発表する雑誌の出版費を必要とする。
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