2011 Fiscal Year Research-status Report
飢餓ストレス依存的エピジェネティック応答機構とその非メンデル遺伝の解析
Project/Area Number |
23770010
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
成 耆鉉 独立行政法人理化学研究所, 石井分子遺伝学研究室, 研究員 (40425632)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / ストレス / エピジェネティック |
Research Abstract |
私は、最近、ショウジョウバエ転写因子dATF-2がヘテロクロマチン形成に必要で、熱ストレス等、外部ストレスにより、エピゲノム変化を来すこと、そして、そのエピゲノム変化が次世代へ遺伝しうることを見出した。そこで、アレイ解析などにより、dATF-2によって制御されている遺伝子を探索したところ、多数の代謝関連遺伝子が同定された。そこで、本研究では、飢餓ストレスにより引き起こされる、代謝関連遺伝子領域における、dATF-2依存的クロマチン制御機構の解析と、その影響が、次世代へも受け継がれていくかどうかを明らかにする事を目標とした。その最初のステップとして、dATF-2完全Null変異体を作成することを試みた。ピッツバーグ大学のHongグループが改良した、ends-out gene targeting法を用いて、dATF-2遺伝子領域を完全に欠失している、遺伝子ノ ックアウトショウジョウバエの作成に取り組み、結果として、dATF-2遺伝子のノックアウト(KO)変異体を得ることができた。dATF-2KO系統は、正常型の外形をしており、発生も正常であった。唯一、成虫の羽が綺麗にたためず、若干開き気味の個体が数%確認された 。そこで、dATF-2KO個体の飢餓耐性を調べたところ、野生型に比べ、優位に高い耐性を示すことが明らかになり、飢餓ストレスにおいて、dATF-2が生理的役割を担っていることが示唆された。予備実験により同 定された、候補遺伝子に関して発現レベルを解析したところ、幾つかの遺伝子に関しては、dATF-2KO系統において、予想通り、発現が 上昇しているのが明らかとなった。しかしながら、これら候補遺伝子に関しては、飢餓ストレスに対する、dATF-2依存的な発現上昇を 期待通りに得られておらず、dATF-2KO系統を用いて、新たに、候補遺伝子の同定を行うことが必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
dATF-2ノックアウトショウジョウバエの作成に関しては、当初の予定よりは遅れはしたが、確実に得ることが出来た。しかしながら、当初考えていた、いくつかの候補遺伝子に関し、飢餓ストレス下でのdATF-2依存的な発現変化を示さなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
dATF-2依存的エピジェネティック制御を受ける遺伝子を同定するため、発現マイクロアレイ解析を行う。そして、同定された遺伝子に関し、実際に、飢餓ストレス下で、dATF-2依存的なエピジェネティック制御に関わっているかどうかを、明らかにしていく。また、候補遺伝子の代謝経路で果たす役割を推測し、どのような生理的意義を持つのかを検討する。飢餓ストレスによる、dATF-2依存的なエピジェネティック制御の分子メカニズムに迫るため、上流シグナル因子の変異体を用いて、実験的に確認する。さらに、飢餓ストレスによって引き起こされた、エピゲノム変化が次世代へ引き継がれていくかどうかを、標的遺伝子の発現レベル、ChIPなどを用いて、明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費のほとんどは、薬品類、培地類、プラスチック器具類の消耗品購入のために使用する予定である。
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Research Products
(2 results)