2012 Fiscal Year Research-status Report
隠蔽色の進化における要因間のトレードオフ:緯度クラインを用いた検証
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23770014
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
鶴井 香織 弘前大学, 男女共同参画推進室, 特任助教 (00598344)
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Keywords | 隠蔽色 / 捕食回避 / 多型 / クライン / 温度適応 |
Research Abstract |
1. 平成23年度に検出された「ハラヒシバッタの隠蔽色における標高クラインの検出」が偶然の産物ではないことを示すため、平成23年度の調査地点における再調査および新規調査地点における、色斑型頻度の標高別調査を行った。現在、収集したデータを解析中である。 2. サーモグラフィ(サーモギア NEC Avio)を用いた実験により、「ハラヒシバッタの色斑のうち、黒い斑紋部分の対表温度が上昇しやすく、白い斑紋部分の体表温度が上昇しにくい」という仮定が正しいことが確認された。 3. 平成23年度に本研究にて明らかとなった「ハラヒシバッタの隠蔽色における標高クラインの検出」に関する成果の公表を精力的に行なった。具体的には、8月に、第14回国際行動生態学会(14th International Behavioral Ecology Congress)にてポスター発表(査読あり)、および、第24回国際昆虫学会(XXIV International Congress of Entomology)にて口頭発表(査読あり)を行なった。 4. 平成24年度に九州沖縄地方の遺伝子解析用サンプルが揃ったことで、北海道から沖縄まで、日本全域におけるサンプルを準備することができた。 5. 平成24年度末より琉球大学の立田晴記研究室で遺伝子解析を行なうための環境整備を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 「ハラヒシバッタの隠蔽色における標高クラインの存在」に必要なデータは既に揃っており、今後速やかに解析が行なわれ、まもなく実証される見込みである。 2. サーモグラフィ(サーモギア NEC Avio)を用いた実験により、これまで正しいことを前提に研究を進めてきた「ハラヒシバッタの色斑のうち、黒い斑紋部分の対表温度が上昇しやすく、白い斑紋部分の体表温度が上昇しにくい」という仮定が、実際に正しいことが確認された。 3. 隠蔽色における体温調節機能とのトレードオフに関する本研究は、平成24年度に開催された2つの国際学会にて高い評価を得ることができた。学会終了後、隠蔽色研究の第一人者である英国ケンブリッジ大学のStevens M 氏から連絡があったことがきっかけで、別刷りを交換し合う等の情報交換を行なうようになった。 4. 平成23年度に引き続き、平成24年度も遺伝子解析用サンプルの収集を行ない、九州沖縄地方のサンプルを揃えることができた。 5. 協力研究者である琉球大学の立田晴記氏とバッタの遺伝子解析について計画打ち合わせをを重ねた。その結果、遺伝子解析に本格的に取り組むため、研究機関を弘前大学から琉球大学へと移すこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、エフォートの殆どを分子系統地理学的解析に充てる。作業の効率化が必要となった場合は外注を行なう。 バッタの系統解析では、核内に存在するミトコンドリアDNAの偽遺伝子が問題になることが多い。本研究でも、この偽遺伝子が問題となることを想定し、まずはこの偽遺伝子問題を克服するための技術を確立することを目指す。 その方法として、Long PCR方により眺めの増幅断片を取得後にprimer walkingによって断片のシークエンスを行なうという方法をとる予定である。解析は、個体識別可能なマイクロサテライト解析を行なう計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 遺伝子解析のための試薬類の購入および、遺伝子解析作業の外注費 2. 沖縄諸島における採集調査旅費 3. 成果発表のための経費(英文校閲・投稿・学会発表など)
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