2012 Fiscal Year Research-status Report
高山生態系の特性を利用した、送粉ネットワーク構造の解析
Project/Area Number |
23770017
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
石井 博 富山大学, その他の研究科, 准教授 (90463885)
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Keywords | 送粉ネットワーク / 開花フェノロジー / 立山 / ポリネーター / マルハナバチ / 双翅目 |
Research Abstract |
平成24年度は、まず昨年からの調査の継続として、北アルプス立山の高山帯(室堂~浄土山周辺,標高2450-2830m,東西約1.6km、南北約2kmの範囲)で、訪花している昆虫の調査、及び植物の開花フェノロジーの調査を行った。加えて、花の形質が送粉群集における生物間相互作用ネットワーク(以下、送粉ネットワーク)の構造に与える影響を評価するため、分光測定器を用い、立山に生育する虫媒花植物100種の花被片の、反射スペクトルを計測した。さらに、訪花昆虫の体表花粉や植物の柱頭上の花粉を採取することで、訪花昆虫の観察だけではとらえきれない相互作用がどの程度存在しているのかや、植物間でどのくらい異種間送粉が行われているのかを調査した。 これらのデータを解析することにより、以下のことがより明確になりつつある。1)高山の送粉者も、幾つかの機能グループに分けられる。2)双翅目ポリネーターも、種ごとに異なる生態学的機能を有している可能性が高い。2)送粉ネットワーク構造には、ポリネーターと花、双方の形態、花の色、ポリネーターと植物の活動フェノロジー、アバンダンスなど、複数の要因が影響している。3)ポリネーターの機能群ごとに、送粉ネットワーク構造に影響する要因の寄与率が異なる。具体的には、双翅目ポリネーターにはアバンダンスが、膜翅目ポリネーターには花の形態や色が、訪花植物種の決定に対してより重要であった。 これらの理由に関する検討や、採取したポリネーター上の体表花粉や柱頭花粉の解析は、来年度以降の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
送粉ネットワーク構造の解析から、昨年度から引き続き考察してきた双翅目ポリネーターの機能分化について、より堅牢な証拠を得ることができた。また、100植物種の花被片の、反射スペクトルデータを蓄積するなど、2年分として十分なデータ量を確保できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り、引き続き立山の高山帯(室堂~浄土山周辺,標高2450-2830m,東西約1.6km、南北約2kmの範囲)で、訪花している昆虫の調査、及び植物の開花フェノロジーの調査を行う。加えて、ポリネーターの形態や花の形態の詳細な記録を行う。さらに今年度からは、地上部の送粉ネットワークに対し、地下部における菌類を介したネットワークの調査も加え、総合的に植物種間の相互作用ネットワークを捉える。これらのデータをもとに、引き続き送粉群集構造の解析を行うと共に、送粉相互作用網の年変動や地域差を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の主体は、北アルプス高山帯での野外調査にある。このため、申請経費の多くは、野外調査に伴う経費(野外調査のための出張旅費・調査補助をする者に対する謝金)として用いる予定である。特に、主な調査地である富山県立山の高山帯は、自家用車の乗り入れが規制されている。このため公共の交通期間に頼らざるを得ず、相応の交通費が必要となる。また、採取した昆虫標本を資料として保管するため、標本箱と標本棚を購入する予定である。プラスチック器具と薬品類はサンプル(ハチや花粉など)を持ち帰るため、デジタルノギスは花や昆虫の形態測定に、マイクロキャップは花蜜量の測定に購入予定である。学会発表のための出張旅費と投稿論文の英文校閲は、研究成果を発表する上で必要なため研究費を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)