2013 Fiscal Year Research-status Report
高山生態系の特性を利用した、送粉ネットワーク構造の解析
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23770017
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
石井 博 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (90463885)
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Keywords | 送粉ネットワーク / 開花フェノロジー / ポリネーター / 立山 / マルハナバチ / 双翅目 |
Research Abstract |
平成25年度も、昨年からの調査の継続として、北アルプス高山帯(室堂-浄土平周辺:標高2450-2830m、東西1.6km。南北2.0kmの範囲)で、訪花昆虫の調査、および植物の開花フェノロジーの調査を行った。また、昨年から行っていた分光測定器を用いた花弁の反射スペクトルの測定に加え、花形態の測定を行った。昆虫や柱頭に付着している花粉の分析も、引き続き行っている。 これらの調査から、現在までに明らかになりつつあるのは以下の点である。(1)これまで知見の乏しかった双翅目ポリネーターも、種ごとに訪花特性がことなり、それが植物の多様性維持に貢献している。(2)膜翅目ポリネーターででは、種ごとの訪花特性の違いに、口器形態と花形態のマッチングや、花色が重要であったが、双翅目ポリネーターでは相対的に形態のマッチングや花色の重要度は低いようだった、(3)これまで、同所的に生育する植物種間の、異種間送粉に伴う繁殖干渉は、植物種ごとにポリネーターの体表上の異なる部位に花粉を付着させることで軽減していると予想されていたが、その効果はかなり限定的である。 双翅目ポリネーターの訪花特性の違いをもたらす要因の解明や、同所的に生育する植物種間が、どのように繁殖干渉を軽減させているのかは、今後の課題として残された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで知見が乏しかった双翅目ポリネーターが、送粉群集のなかで果たす役割について、重要な知見をえることができた。この知見は、膜翅目ポリネーターと双翅目ポリネーターが、送粉ネットワークの構造にどのように異なる形で影響を与えるのかを考察する上で有用であり、3年目の成果としては十分なものと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、引き続き立山の高山帯(室堂-浄土平周辺:標高2450-2830m、東西1.6km。南北2.0kmの範囲)で、訪花昆虫の調査、および植物の開花フェノロジーの調査を行う。これらのデータを基に、引き続き送粉群集構造やその年変動の解析を行う。加えて、亜高山帯や山地帯の調査を行い、標高間の送粉者の移動が、植物群落間の相互作用にどう影響しているのかを解析する。また、送粉者の行動追跡を通じて、植物種間の相互作用の質(共同誘因効果や繁殖干渉など)に影響する要因の特定を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入を予定していた標本棚や標本箱の購入を見合わせたため。 見合わせていた標本棚や標本箱の購入
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Research Products
(8 results)