2013 Fiscal Year Annual Research Report
6者系の共系統地理解析:アリ植物をめぐる生物群集における地理的多様化プロセス
Project/Area Number |
23770018
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上田 昇平 信州大学, 理学部, 研究員 (30553028)
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Keywords | 東南アジア熱帯雨林 / マレーシア / アリ植物オオバギ属 / 共生者-寄生者間の軍拡共進化 / 分子地理系統解析 / マイクロサテライト / 分岐年代推定 / 寄主特異性 |
Research Abstract |
1)サンプリング:マレー半島の3地点(キャメロン,ゴンバック,タイピン),ボルネオ島の1地点(ランビル)及びスマトラ島の1地点(パダン)において,植物・アリ・カイガラムシ・シジミチョウ・カメムシ・タマバエのDNA標本を採集した. 2)使用した遺伝子マーカー:アリ,核DNAのマイクロサテライト部位(5座位);カイガラムシ,2つの核遺伝子領域(EF-1a, WG);シジミチョウ,3つのmtDNA遺伝子領域(COI, ND5, CytB)と2つの核遺伝子領域(EF-1a, WG);カメムシ,1つのmtDNA遺伝子領域(COI)と1つの核遺伝子領域(28S rDNA);タマバエ:1つのmtDNA遺伝子領域(COI). 3)遺伝子解析:上記の遺伝子マーカーを用いて,オオバギ属に共生・寄生する昆虫類の分子系統解析を行った結果,それぞれにおける系統分化と寄主特異性のパターンが明らかになった.アリ・カイガラムシでは,核遺伝子マーカーを用いることによって,これまでのmtDNA解析では解明できなかった寄主特異性の実態が明らかになった.シジミチョウでは,より頑健な系統樹の再構築に成功し,好蟻性形質の消失が派生的に起こったことが明らかになった.カメムシでは,分岐年代の推定に成功し,カメムシはオオバギ・アリ共生の進化の初期段階から,この系に関与していたことが明らかになった.タマバエでは,1種のオオバギに複数のタマバエ系統(種)が寄生する場合があることが明らかになった. 4)今後の展開:今回の解析によって,オオバギと共生アリの寄主特異性が高いことが再検証された.一方,近接した2地点間で,共生アリが寄主植物を乗り換えている場合があることも観察された.今後は,共生アリの寄主転換が起こる要因について検証していく必要があるだろう.
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