2011 Fiscal Year Research-status Report
アミノ酸窒素安定同位体比分析による野生動物の新しい食生態研究法の開発
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23770030
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
中下 留美子 独立行政法人森林総合研究所, 野生動物研究領域, 研究員 (00457839)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 窒素安定同位体比 / アミノ酸 / 野生動物 / 食性 / ツキノワグマ |
Research Abstract |
アミノ酸の窒素安定同位体比解析法は、水棲生物の食性や栄養段階を優れた精度で復元できる手段として、近年国内外の様々な研究分野で大きな注目を集めている。しかしこの手法が陸上動物に適用可能かどうかの知見は皆無であり、陸上生態系や水陸混合系の研究が著しく遅れている主因になっている。そこで、本研究では、信頼度の高い食生態情報を読み取ることを目指し、陸上生態系に適用可能なアミノ酸の窒素安定同位体比解析法を確立することを目的として、今年度は、飼育ツキノワグマ個体を用いて、試料収集や前処理方法、分析方法の検討を行った。 試料はツキノワグマ飼育個体の血液成分およびその餌(ほぼトウモロコシ)である。アミノ酸・ピバロイル/イソプロピルエステル誘導体化を行い、アミノ酸抽出を行った。ガスクロマトグラフィー(GC/MS)を用いて各アミノ酸の同定を行った後、ガスクロマトグラフ燃焼質量分析計(GC/IRMS)により各アミノ酸の窒素同位体比を測定した。測定したアミノ酸のうち、グルタミン酸とフェニルアラニンに着目し、その差から飼育個体の栄養段階を算出したところ、ほぼ2という妥当な結果が得られた。 フェニルアラニンは代謝反応の初期反応にアミノ基(窒素)が関わらないため、餌の情報を保存している。一方、グルタミン酸は代謝の初期反応がアミノ基の離脱反応であるため、代謝による同位体分別が起こり、食物だけでなく代謝の情報も保有する。それらの差をとることで、栄養段階を推定できると考えられる。以上のことより、アミノ酸窒素安定同位体比解析法の陸上大型野生動物への適用可能性が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の達成目標であった、ツキノワグマ飼育個体による検証実験において、アミノ酸窒素安定同位体比解析法の陸上大型野生動物への適用可能性が見出されたことから、本研究は予定通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度のツキノワグマ飼育個体による検証実験から、アミノ酸窒素安定同位体比解析法の陸上大型野生動物への適用可能性が見出されたことから、本手法を野生ツキノワグマへ適用し、その有用性を検証する。具体的には、農業等の被害と関連したツキノワグマ個体や被害との関連が疑われる個体、全く関連していないことが分かっている個体の試料を用いて、より正確な食性情報の復元を目指してアミノ酸窒素安定同位体比解析法の有用性について検証を行う。また、本手法は食性情報だけでなく、代謝情報も得られることが期待できることから、ツキノワグマ飼育個体の活動期および冬眠期の代謝についても検討を行う。最終的には科学的・社会的価値のある野生動物の代表試料に用いて、信頼度の高い食生態情報を読み取ることを目指していることから、そうした価値ある試料の収集も行う。得られた成果は、国内外の学会や学術雑誌等で積極的に発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費1300千円の内訳として、物品費650千円、旅費500千円、人件費・謝金100千円、その他50千円を予定している。物品費の大半を占めるのが、安定同位体比分析に必要な消耗品類(キャピラリーカラムや燃焼炉、還元炉といった高額消耗品やガス類、試薬等)である。旅費は国際学会(第21回国際クマ会議、インド)および国内学会における研究成果の発表、試料収集のための経費を予定している。人件費・謝金については、試料収集や試料の分析前処理の補助に用いる。その他としては、学会参加費用および論文の英文校閲を予定している。
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