2012 Fiscal Year Research-status Report
光を求めて動く植物の仕組み:光による小胞輸送制御の解明
Project/Area Number |
23770040
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 友美 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10362435)
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Keywords | 光受容体 / 情報伝達 / 青色光 |
Research Abstract |
植物にとって光は、光合成に必要なエネルギー源だけでなく、発生・形態形成など生理応答を調節する重要な「環境シグナル」である。「環境シグナル」としての光は、短時間で有効且つ低エネルギーなものが多い。このことから、植物は僅かな光変化を的確に感知し、生存環境に適応するための巧妙な機構を幾つか獲得してきたと考えられる。中でも、青色光を受容するフォトトロピンは、「葉緑体定位運動・光屈性・気孔開口・葉の偏平化」など光合成の効率化に素早く適応する応答に関わっていることが知られている。 申請者らは、このフォトトロピンが関わる応答の分子機構を明らかにする過程で、フォトトロピンと相互作用する因子として小胞輸送関連因子ARF1を取得した。本年度は、昨年度に引き続き(A)植物ARF1の役割解明、(B) 青色光による小胞輸送制御、(C) フォトトロピン情報伝達系の解明、の3つの研究項目を設定し、各々について解析を進めた。(A)及び(B)に関しては、形質転換植物作出・生化学的解析用タンパク質の精製など研究材料の準備、及び解析のための条件検討を主に遂行した。情報伝達系の解明に向けた(C)の研究では、前年度行ったリン酸化基質のプロテオーム解析、変異源処理による遺伝学的スクリーニング、酵母Two-hybridスクリーニング、などの解析によって得た幾つかの因子について解析をすすめることが出来た。 生体分子の輸送を担う小胞輸送は生物において重要な生命現象であり、植物だけでなく生物学全般において最も注目される現象の一つである。生物のホメオスタシスの維持に重要な役割を担っている小胞輸送が、光環境刺激によって調節を受けるという概念は非常に興味深く、本研究課題を遂行することにより、フォトトロピン情報伝達機構の解明だけに留まらない生命現象の解明に貢献できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度、形質転換植物を作出し、生理機能解析を行う予定であったが、栽培室の予期せぬ不調により一時栽培を中断せざるを得なくなり、形質転換植物の作出が遅れた。しかし、多くの形質転換植物体の取得が達成されつつあり、これらの植物体を用いて次年度の早い段階で生理機能解析等が遂行できる状況である。また、フォトトロピン情報伝達に関連するものとして、興味深い因子の解析も進めており、それらの局在を含めた詳細な結果を得つつある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画したように、本研究課題では大腸菌、酵母、植物など多種類の生物を目的に応じて駆使することで、生化学的解析や変異遺伝子取得などを効率的かつ効果的に進めてきた。本年度得られた変異遺伝子・情報伝達因子などについて、生理学的解析等を次年度進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、残った研究課題を遂行するための、培地・資材などの消耗品及び、研究成果発表に必要な旅費・印刷代などに使用する計画である。
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