2011 Fiscal Year Research-status Report
病原体レセプター抵抗性タンパク質による植物免疫の誘導機構の解明
Project/Area Number |
23770044
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河野 洋治 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (00406175)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | イネ / 植物免疫 / OsRac1 |
Research Abstract |
抵抗性タンパク質は、病原体の侵入を感知する細胞内レセプターとして働き、植物の中で最も強い免疫応答を誘導する重要な分子である。抵抗性タンパク質の活性化機構やシグナル伝達機構は長い間不明であったが、申請者は、イネのいもち病菌の抵抗性タンパク質PitがGタンパク質OsRac1の活性化を介して植物の免疫を誘導することを見出した。その研究の過程で、抵抗性タンパク質の下流には、OsRac1以外のシグナル伝達経路も存在することを見出した。本研究では、抵抗性タンパク質の相互作用分子を網羅的に同定し、得られた相互作用分子の免疫における貢献度を定量的な解析を用いて算出して、それらの重要度を評価する。以上の解析を通して、抵抗性タンパク質による植物免疫の誘導機構の全体像を理解する。また、抵抗性タンパク質の細胞内輸送機構や活性化機構の解明も試みる。 恒常的活性型のOsRac1により発現誘導がされる転写因子を検索したところ、basic helix-loop-helix型転写因子であるRac Immunity1 (RAI1)を得た。 RAI1のアクティベーションタグラインは、顕著に耐病性が向上しており、RIM1が耐病性に関与する分子であることが明らかになった。RAI1により発現が調節される遺伝子として、PAL1とOsWRKY19を同定した。RAI1のアクティベーションタグラインでは、PAL1とOsWRKY19の発現が上昇し、反対に、RIM1 RNAi個体では発現が減少した。さらに、ゲルシフトアッセイにより、RIM1がPAL1とOsWRKY19のプロモーター部位に直接結合することも見出した。以上の結果から、RAI1はPAL1とWRKY29のプロモーター部位に直接結合して、それらの遺伝子発現調節をしていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、申請時に3つの視点から解析を行うことを目標とした。いずれの解析も順調に研究が進展しており当初の目的を達成している。今後も、遺伝学、分子生物学、細胞生物学、生化学などの様々な手法を駆使して、抵抗性タンパク質を中心とする植物自然免疫応答における役割の解析を行う。特に、平成23年度は、抵抗性タンパク質の相互作用分子OsRac1により誘導される防御関連遺伝子の同定を行った。その結果、以上の解析を通して、抵抗性タンパク質による植物免疫の誘導機構の全体像を理解する。また、抵抗性タンパク質の細胞内輸送機構や活性化機構の解明も試みる。 basic helix-loop-helix型転写因子であるRac Immunity1 (RAI1)は、PAL1とWRKY29のプロモーター部位に直接結合して、それらの遺伝子発現調節をしていることが明らかになった。また、予備的結果から、RAI1がMAPK3とMAPK6に直接相互作用することを明らかにした。さらに、OsRac1とMAPK3及びMAPK6も複合体を形成することを見出した。MAPK3あるいはMAPK6依存的にPAL1とOsWRKY19の発現が誘導されることを明らかにした。以上の結果から、OsRac1はMAPK3あるいはMAPK6によるリン酸化を介して転写因子RAIの活性を調節し、PAL1とOsWRKY19の発現を調節することを明らかにした。 このように本計画は、当初の計画通りおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、本研究は当初の計画通り順調に進行している。したがって、今後も研究計画に沿って、研究を推進する。未使用額が生じた要因は、天候の不順のため感染実験が1回行えなかったのが原因で、研究の進捗状況に合わせて予算執行計画を変更したことに伴うものである。また、次年度、今年度行うことができなかった感染実験を行い、請求額と合わせて執行する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究は申請者と大学院生(研究協力者)2名の合計3人で構成される研究計画であり、消耗品に年間100万円程度の予算が必要になる。旅費に関しては研究発表や情報収集のために、国内学会(20 万円)を年2回(植物病理学会、植物生理学会)、海外学会(40 万円)を年1回(アメリカ細胞生物学会)参加する予定である。以上の消耗品及び旅費は本研究を推進するために必要であり、金額的にも妥当であると考えられる。
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