2011 Fiscal Year Research-status Report
ケミカルジェネティクスによる二次細胞壁成分合成機構の解明
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23770054
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
米田 新 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50553715)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ケミカル・ジェネティクス / 二次細胞壁 / 道管 / パターン形成 / 細胞骨格 |
Research Abstract |
当研究室ではすでに道管細胞分化のマスター遺伝子としてNACドメインタンパク質VND6ないしVND7を同定しており、それらを機能誘導することにより、シロイヌナズナ植物体やタバコ培養細胞BY-2において、高頻度かつ同調的に道管細胞分化を誘導することが出来る実験系の確立に成功している。本年度はこの道管分化誘導系を用いて、新たなスクリーニングのための条件検討を行った。その結果、シロイヌナズナ黄化芽生えの胚軸において、伸長した表皮細胞や皮層細胞が観察され、これらの細胞で異所的に形成された二次細胞壁は概ね均一なパターンを形成することが分かった。このことから、シロイヌナズナ黄化芽生え胚軸は、細胞生物学的なパターン形成の観察に適していると考えられる。また、BY-2においては、従来よりもさらに高頻度かつ分化転換の早いラインを選抜することに成功した。このラインを用いることで、生化学的に測定するために十分なサンプル量を得ることが出来ると考えられる。次に、化合物ライブラリによるケミカル・スクリーニングがこれらの系で有効であるかどうかを確認するために、既知の阻害剤を添加し、表現型を観察した。その結果、微小管阻害剤のAPMやアクチン繊維阻害剤のサイトカラシンDにより二次細胞壁のパターンが乱されること、細胞壁合成阻害剤のDCBを添加することでより薄い二次細胞壁が形成されること、が確認された。これらのことは、本研究で確立した系が、ケミカル・スクリーニングに有用であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度途中で所属する研究機関を移籍したため、研究を一時中断してしまう時期があり、目標としていた実際のスクリーニングはようやく始まったところであり、条件検討を行い実験系を確立するに留まった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立した道管細胞分化誘導系に対し、化合物ライブラリを添加し、二次細胞壁の成分に影響を与える新規化合物のスクリーニングを行う。一次スクリーニングでは、よりハイスループットな探索を行うため、顕微鏡観察により二次細胞壁のパターンや厚み、細胞壁特異的染色による蛍光輝度の変化などを指標に用いる。得られた候補化合物については、さらに詳細な探索を行うため、添加後の植物サンプルから細胞壁成分を抽出し、GC-MSを用いて単糖組成の変化を解析する。これら二次細胞壁に影響を与える候補化合物について、生化学的なアフィニティ精製と遺伝学的な耐性変異体の探索により、それら化合物の作用機序・標的因子を同定する。アフィニティ精製のためには、まず類縁体化合物ライブラリを作成することで、生理活性に影響を及ぼさない官能基を同定し、そこにリンカー分子を結合させることによってアフィニティ・カラムを作成する。植物サンプルから調整した可溶性タンパク質・膜タンパク質・細胞壁結合性タンパク質をそれぞれ添加し、候補小分子化合物に特異的に結合する標的タンパク質を同定する。遺伝学的な解析では、EMS処理によって得られた遺伝子欠損変異体群、もしくはcDNA過剰発現体のFOXハンティング・ライブラリから、候補化合物に対しより感受性が変化する変異体を探索する。その原因遺伝子を特定することで、小分子化合物の作用機序を推定する。最終的には、二次細胞壁の合成に関わる未知の機構を明らかにすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額が生じた要因は、研究の進捗状況に合わせ、予算執行計画を変更したことに伴うものである。ケミカル・スクリーニングでは多種類の化合物ライブラリを必要とするため、その保管場所として大型のディープフリーザーが必要となる。また、候補化合物が得られた場合、その化合物自体、もしくはその類縁体を多種類・大容量で購入する必要が生じる。概して新規の小分子化合物は高価であり、場合によっては新規受託合成を必要とするので、まとまった研究費の支出が予想される。また、生化学的標的因子探索においてはアフィニティー・カラムの作製やタンパク質精製装置の設備備品費や消耗品費、遺伝学的スクリーニングでは培地やシャーレなどの消耗品費が必要となる。
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Research Products
(6 results)