2012 Fiscal Year Annual Research Report
乾燥ストレスシグナルを制御する低分子ペプチドの解析
Project/Area Number |
23770056
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高橋 史憲 独立行政法人理化学研究所, バイオマス研究基盤チーム, 研究員 (00462698)
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Keywords | 環境応答 / 植物ホルモン / 生物活性物質 |
Research Abstract |
本年度は、同定した環境ストレスシグナルに関与する低分子ペプチドに関して、植物体内での機能を解析するため、様々な形質転換植物体や、生化学的手法を用いた解析を行った。 候補ペプチドのプロモーターにGUS遺伝子を連結させた形質転換植物を作成し、ペプチドが示す発現部位の組織特異性を解析した結果、根や葉の維管束柔組織で発現していることを明らかにした。ABA合成酵素のNCED3遺伝子も同じ組織で発現するため、候補ペプチドはNCED3と同じ組織で発現し機能していることが示唆された。 次に、昨年度作成したRNAi形質転換体のほかに、本年度はペプチドを過剰発現させた植物体、さらに過剰発現体とnced3変異体を掛け合わせた多重変異体を作成し、乾燥ストレス条件での水分損失量を測定した。その結果、ペプチド過剰発現体は水分損失量が少なく乾燥耐性を示した。また、RNAi変異体は水分損失量が多く乾燥に感受性を示したことから、候補ペプチドは乾燥ストレスシグナルや気孔の閉鎖を制御することが示された。さらにペプチド過剰発現体nced3多重変異体では、nced3変異体と同様の乾燥感受性を示したことから、ペプチドはNCED3の上流因子として機能していることが示された。 また、RNAi変異体を用いて乾燥ストレス条件での網羅的遺伝子発現解析を行った結果、NCED3を含め、GolS2やRD29Bなどの主要な乾燥ストレス誘導性遺伝子群の発現を抑制していることを明らかにした。 本年度の成果と、昨年度の高感度質量分析解析などの結果を併せると、候補ペプチドは乾燥ストレスを認識するスイッチとして働き、ストレス依存的に候補ペプチドが細胞外へ放出されることで、ストレスシグナルの認識および伝播が行われ、NCED3の発現を介したアブシジン酸(ABA)の合成や、ストレス耐性の獲得を行うことが証明された。
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