2013 Fiscal Year Research-status Report
ミオシン速度改変による植物特異的細胞内交通機構と高次機能の解析
Project/Area Number |
23770060
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
富永 基樹 独立行政法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 専任研究員 (50419892)
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Keywords | 植物ミオシン / 原形質流動 / 成長制御 |
Research Abstract |
1,原形質流動の駆動力として機能する他のミオシンXIメンバー(XI-1, XI-B, XI-K)にシャジクモミオシンXIあるいは,ヒトミオシンVのモータードメインを融合し,高速型および低速型ミオシンXI-1, B, Kを作製した。 2,それぞれのシングルノックアウト株(xi-1, B, k)に形質転換し,T3ホモラインを確立した。 3,表現型解析の結果,高速型XI-1,Bの発現は植物のサイズに影響を及ぼさないことが明らかとなった。 4,高速型XI-Kの発現は植物を大型化した。しかしながら高速型XI-Kによる大型化は,高速型XI-2と時期や組織において違いがあることが明らかとなった。高速型XI-2は植物成長における前期(栄養成長期)に効果が大きく,高速型XI-Kは植物成長における後期(生殖成長期)に効果が大きい傾向が見られた。葉柄の長さにほぼ変化はなかったが,葉面積および乾燥重量は高速型で約30%増大していた。また単位重量あたりのクロロフィル含量は,高速型でも野生株と変化が見られなかった。高速型ミオシンXI-Kによる大型化は,細胞の品質を保持したまま,マスとして増大していると考えられる。 5,Promoter GUS解析により,XI-Kの発現が,葉柄で特異的に抑制されていることが明らかとなった。大型化や発現に特徴的な違いが見られた葉柄表皮細胞の原形質流動における速度改変型ミオシンXI-Kの影響を見た。XI-Kノックアウト株に,高速型・低速型ミオシンXI-Kを発現させたが,原形質流動速度は高速化・低速化せず,ほぼXI-Kノックアウトと同じレベルであった。XI-Kノックアウト株に,野生型ミオシンXI-Kを発現させてはじめて,原形質流動速度は,野生株レベルまで回復した。 以上の結果より,シロイヌナズナは,組織や発達段階に応じて,原形質流動のミオシンモーターを使い分けていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
速度改変型ミオシンXI-2の成果が2013年11月11日,Developmental Cellよりpublishすることができた。また,プレス発表を行ったところ多数のメディアに報道いただくことができた。 速度改変型ミオシンXI-Kを発現させることに成功し,原形質流動が単なる攪拌システムでなく,生物成長制御システムとして時間・空間的に制御されている可能性が示唆された。この成果は既存の細胞生物学的手法では達成することは難しく,本速度改変システムが植物ミオシンの機能解析に非常に有効であることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回明らかになってきた速度改変型ミオシンXI-Kによる結果は,先行の速度改変型ミオシンXI-2の結果を踏まえ,これまで単純な恒常的撹拌因子だと思われていた原形質流動が成長制御システムとして高度に制御されている事を示した最初の発見になると思われる。従って,学術的にも応用的にも非常にインパクトが高いいものであると考えている。詳細な発現解析,原形質流動速度への影響とモデル化,大型化の時間・空間的定量化を行い,論文化を目指す。おそらく速度改変型ミオシンXI-2と同程度(Developmental Cell)あるいはそれ以上の雑誌を狙えると期待できる。 また,ミオシンXI-2とミオシンXI-Kを同時高速化し,植物の更なる大型化を試みる。高速型XI-2とXI-Kをそれぞれダブルノックアウト株に形質転換を行った。現在,高速型ミオシンXI-2/xi-2においてT3ホモラインが得られたため,今後表現型解析を行う予定。最終的に,両者の掛け合わせによって同時発現株を取得する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では研究が円滑に進んだため,得られた成果を論文として発表することに時間を費やした。未使用額を次年度にまわし,今後多数の解析が必要になると考えられる形質転換植物の培養や解析に充てる予定である。 物品費:150,000円,旅費:200,000円,その他:150,000円,計:500,000円
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