2011 Fiscal Year Research-status Report
両生類における新規の副嗅覚系(嗅陥凹上皮)の形態と機能
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23770066
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中澤 英夫 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30365465)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 嗅覚 / 受容細胞 |
Research Abstract |
無尾両生類の鼻腔の腹側前方には嗅陥凹(recessus olfactorius)という小さな陥凹部が嗅上皮に隣接して存在し、繊毛性の上皮によって覆われている。ヒキガエルの嗅陥凹上皮からは副嗅球への神経投射がみられ、鋤鼻器とは異なる新規の副嗅覚系の嗅覚器であることが示唆されたので、嗅陥凹上皮の組織構造と機能について研究を実施した。嗅陥凹上皮の微細構造を電子顕微鏡で観察し、嗅覚情報伝達に関わるG蛋白質の発現を免疫組織化学法によって調べた。微絨毛をもつ受容細胞がない主嗅覚系の嗅上皮とは異なり、嗅陥凹上皮には繊毛をもつ細胞と微絨毛をもつ細胞の両方が存在した。嗅覚情報伝達に関わるG蛋白質αサブユニットのうち、GαolfおよびGαoについて組織内の局在を調べたところ、嗅陥凹上皮の表層側にGαolfを発現する細胞、基底層側にGαoを発現する細胞がそれぞれ分布しており、これらの点では嗅陥凹上皮と鋤鼻上皮は似ていた。嗅陥凹上皮に含まれる支持細胞には、分泌性細胞と非分泌性細胞の両方が存在し、この点では嗅陥凹上皮は、支持細胞が非分泌性である鋤鼻上皮、支持細胞が分泌性である嗅上皮のいずれとも区別された。嗅陥凹上皮の機能については、細胞膜電位イメージング法で臭い刺激に対する嗅陥凹上皮の反応を測定することにより調べた。膜電位感受性色素を用いた実験条件の最適化を行い、気体の臭い刺激に対して生じる細胞膜電位変化を鼻腔の腹側全体から記録することを可能にした。現在までのところ、嗅上皮よりも嗅陥凹上皮の方が揮発性の臭い物質に対する反応性が低いことを示す結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子顕微鏡観察については、基礎的な形態観察は完了したが、免疫電顕法による実験は継続中である。嗅覚情報伝達に関わるG蛋白質αサブユニットのうち、GαolfおよびGαoについては組織中の局在が明らかになったが、Gαi2については明瞭な局在が副嗅覚系の組織中に確認されず、鼻腔全体における局在を今後も継続して調べる必要がある。臭い刺激に対する細胞膜電位変化の記録については計画通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
臭い刺激に対する細胞膜電位変化の記録については、水溶性の臭い刺激も含めて、より多くの種類の臭い物質について網羅的な実験を行い、計測データの蓄積と解析をおこなう。嗅陥凹上皮から副嗅球への神経投射の詳細については、蛍光波長の異なる2種類のカルボシアニン蛍光色素で嗅陥凹上皮と鋤鼻器の神経を標識し、コンフォーカルレーザー顕微鏡で観察し投射先の比較を行うことで明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
臭い刺激の実験で多くの種類の化学物質を用いるため、新たに試薬と刺激装置の消耗部品を購入する必要がある。また、これまでの研究成果を国際学会(XVI International Symposium on Olfaction and Taste, Stockholm, 2012年6月)で発表するために、参加費用と旅費の一部を支出する。
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