2012 Fiscal Year Research-status Report
両生類における新規の副嗅覚系(嗅陥凹上皮)の形態と機能
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23770066
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中澤 英夫 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30365465)
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Keywords | 嗅覚 / 感覚細胞 / 神経投射 |
Research Abstract |
無尾両生類の鼻腔の腹側前方には、通常の嗅上皮に隣接して嗅陥凹(recessus olfactorius)という陥凹部が存在する。ヒキガエルの嗅陥凹の表面を覆う上皮の形態観察を電子顕微鏡で行った結果、感覚細胞には繊毛をもつタイプと微絨毛をもつタイプの両方がみられ、鋤鼻上皮の感覚細胞の構成と似ていることが分かった。また、嗅覚系感覚細胞の情報伝達に関係するGタンパク質の局在を免疫組織化学法により調べ、感覚細胞の種類(繊毛タイプと微絨毛タイプ)とそれぞれの感覚受容部位で発現しているGタンパク質αサブユニットの種類(GαolfとGαo)に対応がみられることを観察した。 嗅陥凹上皮と鋤鼻上皮からの神経投射については、2色のカルボシアニン蛍光色素でそれぞれの感覚上皮の神経を標識し、投射先の副嗅球における糸球体の分布を比較した。その結果、嗅陥凹上皮からの神経は副嗅球前半部および、副嗅球後半部の前側に投射がみられ、鋤鼻上皮からの神経が投射する糸球体とは異なる分布をもつことが明らかになった。副嗅球前半部にはGαolfを発現する神経が投射し、副嗅球後半部にはGαoを発現する神経が投射するが、嗅陥凹上皮と鋤鼻上皮の投射先の違いは副嗅球前半部において顕著にみられた。 嗅陥凹上皮の機能については、気体の臭いだけでなく、水溶性の臭い刺激を可能にする刺激装置を製作し、蛍光色素を用いた膜電位イメージング法により臭い応答の測定を行った。 研究成果の一部については国際学会や国内研究会で発表をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫電顕法による観察によって組織中のGタンパク質αサブユニット(GαolfとGαo)の局在について確認することができた。Gαi2については副嗅覚系の組織には発現がみられないが、鼻腔全体における探索は継続中である。 神経投射先の分布についての研究は大体計画通りに進展した。 臭い刺激に対する細胞膜電位変化の記録について、アミノ酸やアルコール類など水溶性の臭いに対する応答記録を開始した。まだ嗅陥凹上皮でのみ大きな応答がみられる刺激の特定には至っていないので実験を継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
嗅陥凹上皮の応答記録については、各種アミンや天然有機化合物など臭い刺激の種類を増やしてより多くの計測データの蓄積と解析を行う。 行動との関連については、嗅陥凹上皮からの神経を切断した実験群と対照群の間で臭い刺激に対する行動を比較し、嗅陥凹上皮からの感覚情報に依存した行動の有無を確かめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
臭い刺激のデータを増やす目的で試薬類を購入する他、行動観察のための機材や消耗部品を購入する必要がある。その他、論文投稿のための支出を予定している。
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